新事業模索で出会ったコーヒー栽培
自動車部品メーカーのアート金属工業㈱(三城伸五社長)が新事業としてコーヒーの栽培に乗り出している。工場の移転にともない遊休地となった1万4000㎡の敷地に250㎡のハウスを建て、2023年にアラビカ種ディピカを40株植樹した。経営企画部グループマネージャーの井出隆宏氏(54歳)によると「コーヒーの木は成木に育つまで3年かかるといわれ、今年からようやく本格的に収穫ができる。今季は80kgの収穫を目標にしている」という。
それにしても、なぜ自動車部品メーカーが国内では珍しいコーヒー栽培に打って出たのか。そもそも、自動車業界にはEV(電気自動車)化の波が押し寄せ、「従来の内燃機関の車は市場から姿を消す」といわれることもあった。そうしたなか、エンジンのピストン専門メーカーである同社は危機感を強め、全社的に新事業の開拓を模索。EV部品、自動車外部品、地域社会貢献の3つの柱で推進するなか、その過程で社員アンケートを取ったところ農業を推す声が多く、また遊休土地の活用にもつながるこの分野への進出がきまったという。そして「取引先の関係者から『岡山県に国内ではじめてコーヒーのハウス栽培に成功した農場がある』という話を聞き、現地に視察に出向き、ノウハウを学んだ」と井出氏は話す。
「木の成長とともに風味増す」と期待
現在、同社のコーヒー栽培の責任者を務めているのは、経営企画部主査の中曽根英明氏(59歳)だ。「コーヒー栽培はもちろん初体験で、試行錯誤を重ねながら取り組んでいる。なかでもハウスは夏場で簡単に35℃を超えるため、温度が上がり過ぎないように苦労した」と振り返る。
苦労の末に初年度はカップ7杯分の豆を収穫することに成功、社員がひと口ずつ大事に味わったという。「アラビカ種はフルーティーな風味で木が大人になるにしたがい、酸味とコクが増すので、今年の収穫が楽しみだ」と中曽根氏は笑顔を見せる。将来的には収量の安定化のほか、栽培ノウハウの普及を事業化する道を探っているという。
ちなみに、同社は本業のピストン製造に関しても、設計から鋳造、加工、表面処理まで自社で完結できるという強みを持っている。井出氏は「技術力には定評があり、業界最大手のトヨタ自動車グループと安定的な取引実績を重ねている」と自信をのぞかせる。EVブームは一時期にくらべれば沈静化し、それにともなってハイブリッド車の見直しなど内燃機関の需要があらためて高まりつつある。だが、「けっして楽観視せず、次世代カーに対応できるオンリーワンの技術を磨いていきたい」と手綱を締めている。
アート金属工業(株)
長野県上田市常磐城2-2-43 TEL:0268-22-3000 創業:1917年
従業員:3503名(グループ全体) 資本金:23億9700万円
小山法恵さん
週刊うえだリポーター
真田氏が築いた難攻不落の上田城。アート金属工業㈱はその西側にあります。主に自動車部品のピストン製品を製造していますが、今後の社会情勢を見据え、あらたにコーヒー栽培に着手されました。地中熱エネルギーを利用してヒートポンプで温度管理するなど、これまで培った製造業のノウハウを集中管理システムに生かしています。栽培ノウハウの普及も視野に入れているそうです。
月刊『コロンブス』7月号 絶賛発売中!
本記事は地域における〝産業栽培〟をテーマとした月刊『コロンブス』7月号に掲載されています。同誌では毎号、全国12エリアの元気企業・躍進企業の記事を掲載‼ ぜひご一読ください。





