奄美群島の加計呂麻島(鹿児島県瀬戸内町)にある戦争遺跡、旧日本海軍の大島防備隊本部跡をドローン(無人機)で調査する取り組みが今年3月からすすめられている。

調査を行っているのは瀬戸内町教育委員会とヤマハ発動機かなえ(静岡県)。同町教育委員会の鼎丈太郎氏によれば、防備隊本部跡は島の湾岸部から山間部にかけて分布し、「毒ヘビのハブが生息しているうえ滑落する危険性があるため、山間部の調査がほぼ手つかずになっていた」そうだ。そこで「スマート林業促進に使用していたドローンをこの戦争遺跡にも活用しよう」ということに。

実際にドローン調査を行ってみると、爆弾痕とみられる直径8~9m、深さ40~90cmのくぼみを約20カ所発見。そして機体から高精細なレーザーを照射して詳細な地形データを取得し現地の立体図を製作したという。鼎氏よると「レーザーは木や下草のあるところにも入り込むため、山のなかに入って踏査するよりも精密な地形図を作製することができた」という。事実、この立体図では爆弾痕だけでなく人工構造物も確認され「文献史料や当時を知る関係者からの聞き取りと照合した結果、その建物は旧日本海軍のドックや機銃陣地で、道路の跡があることもわかった」と鼎氏。「ドローンによってつぎつぎと新事実が判明し、とても驚いた」と話す。

大島防備隊は太平洋戦争末期の1945年4月、米軍と戦闘を繰り広げた。奄美大島に所在する瀬戸内町には計206カ所の軍事施設跡があり、奄美大島要塞跡を構成する安脚場砲台跡など3遺跡が2023年に国史跡に指定され、今年も大島需品支庫跡など3遺跡が追加指定される予定。鼎氏は「ドローンでかなりのレベルまで調査できることがわかったので、今後は調査対象を実久砲台跡など山間部にあるほかの遺跡にも広げたい」としている。島民にとっての戦後はまだ先のようだ。

(問い合わせ)
瀬戸内町教委埋蔵文化財センター
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立体図化された大島防備隊本部跡