約2tの海洋プラスチックゴミをドローンで回収

廃棄物処理業の北溟産業㈱は鳥取県の海岸線に漂着した海洋プラスチックごみをドローンで運搬するユニークな環境美化事業をすすめている。

中川優広代表取締役(57歳)によると、この事業は地元の湯梨浜町から持ちかけられたものだ。海辺に漂着した海洋プラごみはこれまでボランティアが回収に取り組んできたが、「足場が悪かったり、高い崖があって車による運搬ができなかったりと、運搬にてこずってきた」という。そこで町からの打診を受け、広島のドローンメーカーと共同で専用のオリジナル機を開発し、2023年に本格稼働をはじめた。

たとえば、崖の下の海岸線までは人力でごみを集め、それを縦0.8m、横1.8mのかご1回あたり15~20kgのごみをドローンで崖の上まで運び上げ、待機する運搬車に載せ換えるというもの。いまではその話を聞きつけた隣町の北栄町からも委託を受け、2町合わせてこれまで数十日間出動し、計2t近い海洋ごみを回収している。中川社長は「長崎県など他県からも声がかかっている」と事業の広がりに手ごたえを感じる。

ドローンに期待される役目はもうひとつ。災害で陸路が絶たれ、孤立化した被災地に救援物資を運び届ける任務だ。中川社長は「すでに県のレスキュー隊の一員になっていて、イザというときはただちに出動できる準備を整えている」と話す。最近は県の委託で山小屋のトイレの汚物や山の遊歩道の資材を運ぶ仕事も引き受ける方向で検討がすすんでいる。このようにドローンの機能、役割りが拡大したことで全国の展示会でも話題を集め「大手企業からもビジネスパートナーの話を持ちかけられるなど、自社機の商品力に期待が膨らむ」と話す。

海洋プラごみを運搬するドローン
海岸線に漂着した大量のごみ

繁殖いちじるしい竹を土壌改良

その期待は本業の一般・産業廃棄物の処理業にも。今では回収したごみを堆肥化する事業にも力を入れている。中川社長の話では、鳥取県の耕作放棄地では竹林の繁殖がいちじるしく、生態系への影響が地域課題になっている。そこで同社は伐採された竹を堆肥化して土壌改良剤として再利用しようと決意。中川社長は「重さは一般の家畜ふん堆肥の3分の1と軽く、まきやすい」と使い勝手のよさをアピールする。運搬車で生ごみを回収しながら車上で液体堆肥に変換する装置も開発した。

中川社長は本業とドローン事業の融合について「プラスチックのリサイクルは難しいことは承知しているが、将来はドローンで回収した海洋プラごみを何とかリサイクルして廃棄物の包括的な減量をめざしたい」と前を見つめる。

竹を粉砕した土壌改良剤
「廃棄物の包括的な減量をはかる」と語る中川社長

岩山 悟さん
(公財)鳥取県産業振興機構
チーフコーディネーター
(リサイクル・脱炭素支援担当)

鳥取県倉吉市の北溟産業は、地域の困りごとを宝物に変える「資源循環」のスペシャリストです。生ごみ、放置竹林などを豊かな土へと還元し、負の遺産を地域の資産へと塗り替える取り組みは、まさにSDGs の理想形。またドローンによる海洋ごみ回収など、ワクワクするような新技術で未来の環境を切り拓いています。地方創生のトップランナーとして、今もっとも注目すべき心強い、一社です。