修理を前提に世界でひとつの“マイ箸”推奨

「わじま木箸    箸アシメ」という名の塗り箸がある。アシメとは左右非対称(アシンメトリー)の意。通常の一膳の箸とは違い、使うひとの手指に応じて1本ずつ色も形も重さも変えることができるオーダーメードの箸だ。製造しているのは、能登で親子三代80年にわたって石川県の伝統工芸品「輪島塗箸」を手作業で作りつづけている小山箸店。工芸品を、単なる意匠ではなく実用にこだわった生活必需品に高めている老舗である。

「脳梗塞で手指に障害が残った両親が自分で食事ができるようにと製作。そこから、服や靴のようにそれぞれの身体や好みに合ったものを作ろうと思った」と話すのは2代目の小山雅樹さん(70歳)。 3代目となる息子の俊治さん(37歳)と職人作業をつづけているが、最初の商品名が「わじま木箸オーダー箸」。

その後改良し、箸未経験の外国人向けに断面を二等辺三角形にした「ピタゴラスの箸」、左右の形状が異なる「箸アシメ」を生んだ。「すべて修理で長く使えるオーダー箸」だという。箸アシメは子ども用もあり、「『10年後の所作美人をつくる』を基本に、スプーンやフォークから箸への移行期に使う道具として3年かけて完成させた」そうだ。赤は止まれ、青は進め、の信号機にならい、指の付け根で支える1本は赤色、指でつかんで動かすもう一本は青色に塗ったものもある。それらオーダー箸製造が専門の「小山箸店」も店内に開設している。

 

個々人の手指になじむよう作られる箸アシメの持ち方
四角、八画、尖角に面取りされた、わじま木箸の喰先(左から)

刷毛塗りで漆7回、オンリーワンのオーダー箸

また、個々人に合わせたオーダー箸も製造している。縞黒檀や紫檀など木目の詰まった上質の天然木を手で削り、漆を7回以上塗り重ねることで深い光沢や耐久性が生まれる。長さもさまざまで、形状も持ち手部分が四角・八角、喰先(先端部分)が尖角・四角・八角など個々人の手になじむよう幅広く、滑らかな質感も持ち味だ。

小山さんは「輪島の塗り箸製造専門店で唯一、刷毛塗りを行い、天然の漆塗りには欠かせない『回転風呂』を置いている」という矜持もある。回転風呂とは漆を塗った箸を、時間をかけて回転させ、均一に乾かす装置だ。

昨年1月の能登半島地震では自宅兼工房が傾き、その回転風呂も大きく破損。さらに9月には商品の避難先が豪雨被害に遭うなど辛酸をなめた。まだ復興途上だが、「年内に店舗兼住宅を建て替え、同じ場所で輪島塗箸を作りつづける」という小山さん。能登・輪島の地で、長く伝統を紡いでいく決意を固めている。

「修理をして長く使ってほしい」と、刷毛塗りに余念がない 小山さん
3代目となる俊治さんは「削り」を主に担当している

門前哲也さん
(公財)石川県産業創出支援機構
企業振興部
部長代理兼販路開拓支援課長

能登半島地震や奥能登豪雨からの復興に向けて歩んでいる小山箸店。伝統の技を守りながらあらたな工夫を積み重ね、地域の誇りとして歩みをすすめる姿に、大きな勇気をいただいています。そのたしかな技と想いは、かならずや地域を支える力となり、これからますます多くの人々に愛される存在になると確信しています。能登から全国へ、輪島塗箸の魅力を発信しつづける小山箸店を心より応援しています。