持続可能な産業への成長目指して

海洋土木が主業の北日本海事興業㈱は潜水士専用のパワーアシストスーツの開発に取り組んでいる。潜水士はなんといっても海洋土木の現場作業を支える重要な担い手。

「人の目に見える海面上の構造物を海面下で支えるのが私たちの仕事です」と椚原大輔社長(53歳)は解説。そして「海中構造物の土台には重さ50~100kgの大きな石が使われ、それを海中で転がして一つひとつ積み上げる作業をしているのが潜水士の仕事だ」と話す。労働は過酷で、その上、潜水士が着るウェットスーツも機能性に欠け、それなりに重いという。

そこで椚原社長は「潜水士の負担を軽減したい」とパワースーツの開発に乗り出した。パワースーツは作業する人に装着し、重いものを持っても軽く感じる器具で、運送業や介護施設など重量のあるものを運ぶ現場で重宝されている。椚原社長 は「この陸上用のパワースーツ を水中用に転用できないか」と着想し、4年前から開発パートナーの法政大学の研究室と実証実験をすすめている。

「陸上用のパワースーツは腰に装着して腰の負担を軽減するのに対し、水中用は潜水士の作業が巨石を転がすことが中心であることから、腕と肩につけて腕と肩の負担を軽くする」ことが第一と椚原社長。

思いついたのは「海上から空気を送り込み、油圧の力で稼働させる」ことだった。実証実験は全国の高校のなかでも珍しい潜水士育成コースのある種市高校(岩手県 洋野町)のプールで、実際に潜水士が潜り、スーツを装着して重りを移動させる試みを重ねたそうだ。すると「体感的には重さの40%軽減できる効果があらわれた」と手ごたえを感じている。

「水中パワースーツで潜水士の負担を軽くしたい」と語る椚原社長
地元高校のプールですすむ実証実験

あと2年で実用化目指す、人手不足にも貢献

北日本海事興業は椚原社長の父の現会長(86歳)が興し、椚原社長は2代目。パワースーツ開発の背景として、潜水士の人手不足と高齢化をあげる。「建設業のなかでも潜水士は特殊な仕事。なり手が極端に少なく、高齢化も著しい」と危機感を抱く。「海洋土木業を持続可能な産業に育てるためには潜水士の負担軽減が喫緊の課題だ」と話す。潜水士のパワースーツが誕生すれば国内初の快挙。「あと2年をめどに実用化にこぎ着けたい」と意欲を燃やす。

海中の巨石の移動を楽に
開発段階のパワースーツを身に着ける潜水士

野澤 昇さん
青森県事業承継・引継ぎ支援センター
統括責任者

北日本海事興業㈱は地元八戸の企業を守り育てるという強い使命感を持っています。潜水士の人手不足と高齢化の課題解決を目指し、潜水士の負担軽減を目指すパワーアシストスーツ研究など、先進的な挑戦をつづけています。地域の未来を切り拓く力強い存在として、これからも発展を心より応援します。さらに、地域社会との連携を深め、持続可能な成長を実現する姿勢に大きな期待を寄せています。