難易度の高いアルミ溶接にも100%対応できる技術力

金属溶接のなかでティグ溶接の特色といえば火花が飛び散らず、一般的な溶接より溶接部がキレイに仕上がることだ。そのティグ溶接に特化して金属加工を手がけているのが㈱ティグ水口。中前直也社長(53歳)によると、ティグ溶接は板金などの薄い金属や細かい金属の溶接に向いているという。

創業者にあたる中前社長の義理の父が事業を興した当初からティグ溶接一本で事業に取り組んできた。社名に「ティグ」が入っているのも創業者のこだわりが反映している。

ティグ水口に所属する溶接士は11人。全員が金属溶接、半自動溶接、ガス溶接などさまざまな技術資格を保有していて、まさに「技術者集団」と呼ぶにふさわしい。中前社長は「金属のなかでもやわらかくて熱伝導率の高いアルミニウムの溶接は、高い技術力と作業のスピード感が求められるが、うちの溶接士はアルミ溶接に100%対応できる」と胸を張る。

「技術について全員から提案を受け、工程に生かせる道を模索する」と中前社長。「ふだん使わない道具や資材を扱った提案のなかでもあたらしい発見があった」そうだ。この小集団活動によって、資材を運ぶ新型の台車を開発し、特許も取り製品化に漕ぎつけたことも。

溶接で取り扱うのは食品の重さを量りながらラッピングする自動計量包装機の部品から、イベントステージで照明器具を吊り下げる舞台装置の部品までと精密系、大型系を問わず幅広い。人手不足を見すえ、2023年に溶接ロボットを導入し、省人化と省力化をはかった。

こうした技術力のさらなる向上をめざし、ティグ水口はさまざまな取り組みを展開している。ひとつは小集団活動。若手からベテランまで3~5人の小グループにわけ、2カ月に1回ずつミーティングを重ねる。

ティグ溶接は溶接部の仕上がりがキレイ
ティグ溶接一筋の中前社長

小集団活動と遊び心で伸ばす自社開発活動

もうひとつの取り組みは「遊び心」を養うことだ。休業日の土日、工場を従業員に開放し、なんでも好きなモノを作っていい環境を整えた。そこから生まれたのはテレビアニメ「機動戦士ガンダム」の14分の1スケールのアルミ製の全身モデルや旅客機YS-11の20分の1サイズのアルミ製機体などがあった。これらは溶接士らの遊び心に満ちあふれた作品ばかりだ。作品は社内応接室に展示され、来訪者からは「これらの作品にはさまざまな技術が詰め込まれ、溶接士の技術力の高さがうかがえる」と感心されるそうだ。

こうした取り組みが評価され、ティグ水口は中小企業庁の23年度はばたく中小企業・小規模事業者300社に選ばれた。中前社長は今後について「小集団活動から生まれた台車をスタート台にして自社開発に力を入れていく」と話し、いずれは「注文を待たなくても能動的に事業展開できる経営にシフトしていきたい」と前を向く。

溶接士の遊び心で生まれた作品
初の自社開発となった台車

舩越英之さん
(公財)滋賀県産業支援プラザ
経営支援部 販路開拓課長
(兼)経営相談室長

㈱ティグ水口は「ティグ溶接」の分野で高い技術を有し、精密部品から大型装置まで手掛けています。私がはじめて同社を訪問した際に目にしたのが、「機動戦士ガンダム」の 14 分の1スケールのアルミ製モビルスーツ。この模型には同社の高い技術力と遊び心が凝縮されており、ガンダム世代の私の心を鷲掴みにしました。これからも同社の情熱が滋賀のモノづくりをけん引し、活性化することを期待しています。