エコで低コストな農業を実現

気候変動に翻弄される農家が多いなか、独自の栽培方式をつぎつぎと生みだし、安定した高品質の野菜づくりをすすめているのが㈱川助農園だ。事実、トマトの糖度はブドウ糖に匹敵する最高16.1%を記録するなど国内トップクラス。栄養価も高く、ビタミンCや旨みの元になるグルタミン酸が一般的なトマトの2倍強という。商品名は「ハイパーブリックストマト」。まさに美味しさと栄養を兼ね備えた一級品だ。

この農園は1927(昭和2)年、日本初のトマト栽培に乗りだしたことで知られ、その草創期には実を和紙で包んで保温し、低温栽培にチャレンジしたり、南極大陸の昭和基地に食材として提供したりといった農家歴を持つ。

「今でも変わらないのは、チャレンジ精神と土を大切にし、環境負荷低減を心掛けてトマトづくりをすることだ」と名倉秀樹社長(57歳)。行き着いたのは水耕栽培で、作業負担が少なく培養液を交換せずに使える循環型養液栽培装置や非循環式の養液培養システムを導入している。こうしたさまざまな試みを重ねながら、安定した高品質の野菜づくりに取り組み、トマトのほかにもキューリや小松菜、水菜、クレソンなどを水耕栽培で育てている

そうこうしている間に、同じ愛知のトヨタ車体がハイブリッド車などに採用している技術ノウハウなどを農業課題の解決に転用したい、とイノベーション・プログラムのパートナー企業を募集していることを知り、応募してみたところ、見事、採択され3年前にそのプログラムを導入することに。

それは燃料電池の要素技術を組み合わせて農機で発電し、蓄電池によってトマト栽培ハウス内の加温やLED照明など「自動制御プログラムを駆使してエコで低コストな農業の実現に生かす」(トヨタ車体担当者)というもの。その結果、「トマト生産量は導入前に比べて1.3倍から1.4倍に。育ちも良く、しかも省エネ」と名倉社長は実感。この実証結果は全国初の事例になるそうだ。

新たな農業イノベーションのための自動システム制御盤
ブドウ糖クラスの高糖度を誇る川助農園産のトマト

トマトの次は大粒で甘いイチゴ生産へ

栽培法ではスペースを有効活用できる土壌不要の垂直多段方式を導入している。おかげで収穫量、品質ともに大幅にアップし、「トマトについで来年度にはイチゴ生産にこのシステムを入れ、大粒で甘いイチゴをつくりたい」と名倉社長。

さらに「より高みに成長できるようこの農業イノベーションを他の生産者と共有できるシステムをつくりたい」と。そして「食料安定供給と日本の食文化を海外に拡げるため仲間をつくりたい」と意欲を燃やしている。

調査・研究・見聞を重ねてつくり上げてきた生産ビニールハウス
「今回の農業イノベーションを生産者で共有したい」と話す名倉社長㊥

片桐乾次郎さん
愛知県よろず支援拠点
コーディネーター

川助農園は4 代にわたり革新を重ねてきた老舗農園であり、最新の「多段式安 定トマト栽培システム」で省力化と高品質化を高次元で両立しました。よろず支援拠点では、財務分析や補助金計画の整理を通じて投資判断の材料を提供したり、具体的なアドバイス、支援をしています。トヨタ車体との実証実験を経て、製造業の技術と農業を融合させた先進的なモデルを確立し、あらたな可能性を切り拓く企業として推薦いたします。