エレキギターとアンプの間につなぎ、音を歪ませたり、揺らしたりするエフェクター。㈱LEP INTERNATIONALは、エフェクターの輸入やオリジナル製品の販売などを手掛けており、業界では世界的に有名な企業だ。
花巻市から世界にエフェクターを発信する 川村社長
「福田パン」とコラボしたあんバターサンドのエフェクター

まずは、同社がどのように成長を遂げたかを紹介したい。趣味でロックバンドに参加していたという川村朋和社長(45歳)は2004年からギターエフェクターの輸出入を個人事業としてスタート。当時、アナログ製のエフェクターは日本がトップシェアを誇っていたが、デジタル製のマルチエフェクターでは遅れをとっており、最新のドイツ製などを積極的に扱うことで、少しずつファンを獲得、気づけば400種類以上のエフェクターを販売するようになっていたという。その後、売り上げも増加し、個人事業では対応しきれなくなったことから、10年には㈱LEP INTERNATIONALを設立。足でペダルを踏んでエフェクターの音を切り替える「スイッチングシステム」を自社開発し、中国に工場を設立するなど、事業を拡大していった。このスイッチングシステムはコンパクトなデザインが特徴。海外ではエアロスミスのジョー・ペリー、国内ではRADWIMPSの野田洋次郎やあいみょんなど、有名ミュージシャンが同社の製品を愛用しているという。

だが、活動の幅を広げようとしていた矢先、コロナ禍が発生し、多くの音楽イベントが中止や延期を余儀なくされてしまった。現地に足を運んで情報収集することを大切にしていた川村社長にとっては、大きな痛手だった。しかし、同社は「こういう時期だからこそ、おもしろい商品をつくって、音楽業界を明るくしたい」と新商品開発に着手。そうして完成したのが「Animals Pedal Custom Illustrated」だった。これはイラストレーターとコラボし、かわいらしい動物の絵をプリントしたエフェクターで、今までの商品にはない「ゆるさ」が国内外で大ウケ。さらに「Custom Illustrated」シリーズとして描き下ろしの絵をプリントしたものをつぎつぎと商品化したところ、100台売れたら大ヒットといわれる業界のなかで、50種類のほとんどで100台以上を売り上げたという。

川村社長の母校の児童は、 電子掲示板に大喜び

コロナ禍にありながら、成功をおさめた川村社長は、地域貢献活動にも力を入れている。盛岡市の有名パン店「福田パン」とコラボし、エフェクターに「あんバターサンド」の絵を描いたり、売り上げの一部を東日本大震災の教育支援に寄付したり、母校の矢沢小学校に電子掲示板として使用する大型ディスプレーを寄贈したりと、実にさまざまな活動を展開中だ。「ニッチなビジネスだが、これからも地元に貢献できるような産業に育てていきたい」と話す川村社長。花巻市に理想のエフェクター工場を建設する夢に向かって奮闘中だ。