地域資源を生かした持続可能な地域づくりに取り組む秋田県大館市の山瀬地区山村活性化協議会(齋藤隆雄会長)が28日、同市山田の食品加工業・みちのく食品(田村貴明代表)でタケノコの皮を原料にした珍しい手すき和紙の試作を行った。国の助成を活用し2021年度から進めている事業で、今後も試作を繰り返しながら2年後の商品化を目指す。
同協議会は、農作物や山菜などの特徴的な地域資源の掘り起こしを図り、それらを生かした活力ある地域づくりを目指すことを狙いに、地域の事業所の代表や農家などの有志で21年度に設立。田村代表が副会長を務める。
事業を担当する田村副会長によると、タケノコの和紙は、多くの和紙に用いるコウゾやミツマタなどの代わりに、タケノコの皮から繊維を取り出す。
同市山瀬小学校が環境教育の一環として、卒業証書に用いる紙を手作りしようと、10年ほど前から同じ原料で取り組んでいることを知った田村副会長が、廃棄処分していた年間約1㌧の皮を有効に利用できるのではと考えた。
事業化に先立ち、田村副会長らは同校の取り組みに参加させてもらいながら、工程や必要な道具、薬品などについて学んだ。自社の食品加工機械を用いることで、作業工程を大幅に短縮しながら規模を拡大できることも分かり、昨年から試作を始めている。
手すきの工程を担当する従業員の古家彰子さん(68)=同市山瀬=によると、すりつぶしや、すきの加減による繊維のむらから、独特の風合いや味わいが生み出されるという。
これまでの試作で、10㌔の皮からA3判が約10枚できることが分かっている。
すりつぶす時間が長いと枚数が増え、洋紙のような質感に近づくが、狙っている独特の風合いが失われる。逆にすりつぶしがあまいと、大きな繊維が残りすぎ、カビなどによる品質低下の原因になるという。この日も2人で厚みや密度を相談しながら何度も工程を繰り返した。
田村副会長は「田代岳産のタケノコの皮100%にこだわりたい。今後は商品化に向けて品質の安定化を図っていく。これまでの試作で立体にも対応できることが分かっており、これからも可能性を探りたい」と夢を膨らませた。

2022年7月29日(北鹿新聞)