沖縄らしいシャツといえば「かりゆしウェア」を思い浮かべる人も多いだろう。実はこれ、ハイビスカスの花など沖縄をイメージしたデザインが特徴の開襟シャツで、現地では「正装」として扱われており、スーツ代わりに冠婚葬祭や仕事で着用する人が多いという。そこで、北中城村のアパレル業、Growth(グロース)は2018年に「かりゆしウェアをもっとカジュアルに着てほしい」という思いで「はいさいウェア」という新シリーズを開発、今や同店の看板商品になっているそうだ。
紆余曲折を経て、新店舗を成功に導いた 喜納氏

代表の喜納宏史氏(42歳)によると「このはいさいウェアの開発は従業員のひとことからはじまった」という。従業員の家族が職場の研修にかりゆしウェアを着ていった際、「せっかく買ったのに年に1回着るか着ないかの服だし、似たようなデザインが多い」と不満を漏らしたのを機に、喜納氏は「それならオリジナルのかりゆしウェアをつくってみよう」と試作品づくりに取り組みはじめたそうだ。もともとTシャツのプリントを得意としていた喜納氏、さっそくその技術を生かして無地の解禁シャツの襟やポケット、袖などにオリジナルの柄をデザインして試作を重ねたという。

ウェブデザインは複雑なデザインを 短時間で作成できる

しかし、かりゆしウェアを名乗るにはデザインや生地、量産体制などの条件を満たし、沖縄県衣類縫製品工業組合に認められなければならない。そこで喜納氏はこの新シリーズを「はいさいウェア」と名づけて販売を開始。すると、シワになりにくい生地や好きなように柄をデザインできるカジュアルさ、1枚8000円程度の価格(かりゆしウェアは1枚1万5000円程度)がウケて、普段着として購入する人が急増。 今では累計2000枚を販売するヒット商品になっているという。

もっとも、このはいさいウェア、誰でもカンタンに流通させられるわけではない。聞けば、喜納氏は東京でファッションデザイナーの仕事に就いた後、28歳で沖縄にUターンして洋服の小売店を開業したという。しかし、リーマンショックなどのあおりを受けて1年で廃業。その後、派遣会社の営業をしながら、ウェブデザインを担当したが、3年ほどでその派遣会社も倒産してしまった。そして、喜納氏は「こうなったらとにかく好きなことを追求しよう」と一念発起し、 グロースを開業、はいさいウェアという新しいファッションの生みの親に。役立ったのは派遣会社のときに学んだウェブデザインの技術だったという。とくに「Tシャツの複雑なデザインを短時間で作成する技術は、はいさいウェアの核心につながっている」とも。喜納氏が苦心の末に生み出したはいさいウェアは順調に売り上げを伸ばしており、同店の事業も順調に推移している。「来年には法人格を取得する」とのことなので、今後の展開にも大いに期待したいところだ。