(上写真)ピクニカの製品は、ブランドサイトで購入できる

1961年に油圧機器の総合商社として創業した大起産業㈱は、トンネル掘削マシン用の油圧装置や各種産業機械の設計製作、航空機の機体の組み立て、溶接作業などを請け負うモノづくり企業である。

近年はロケットの射場設備を手掛けるなど、宇宙領域でも活躍。その高い技術力と成長性が評価されて、経済産業省の「地域未来牽引企業」にも選定されている。
そんな同社が、2021年4月に新規事業としてアウトドア用品ブランド「ピクニカ」を立ち上げた。背景には、コロナ禍による航空機関連事業の業績低迷がある。ピクニカ事業を担当する天田淳一専務は「もともと弊社の主力事業である『産業機械』『航空宇宙』につづく〝第三の柱〟を模索していたところ、コロナ禍によって民間航空機の生産がストップし、組み立て依頼も激減した。売り上げが4割以下まで落ち込んだことから、いよいよ新規事業の立ち上げが急務となった」と話す。
検討するなかで全社員を対象に新規事業のアイデアを募集したところ、釣り好きの社員が釣り具の輸入販売事業を提案。大規模な設備投資が不要で、すぐにはじめられることから経営陣も乗り気になり、前向きに事業化を検討したが、釣り具だけでは事業の発展性が乏しいという結論にいたり、より市場の大きい「アウトドア用品」の輸入販売にチャレンジすることになった。「BtoC事業へのはじめての挑戦ということで、暗中模索のスタートだった。商品企画やブランディング、中国の工場との交渉、販路開拓、ECサイトの立ち上げなど、今まで航空機の組み立てをしてきた社員と一緒に試行錯誤しながら一歩ずつすすめてきた」と天田専務は話す。

「ピクニカ」事業部のメンバーと天田専務(写真中央上)
人気の「ピクニCAR」は天板をセットすればテーブルとしても使えるスグレモノ

以来、同社は木製テーブルやイス、マットなど10種類ほどのアイテムを販売。なかでも折り畳み可能で大量の荷物を運べるワゴン「ピクニCAR」が人気だという。また、メディアで取り上げられることも増えており、その影響もあって初年度の売り上げは事業部全体で300万円に満たないほどだったが、2期目となる今年度は8カ月の時点で1400万円を超えているという。
「まだまだ規模は小さいが、少しずつアウトドア好きの方にも認知され、事業拡大の手ごたえを感じている。今後は本業で培ってきた技術力を生かして、さらに魅力的な商品を開発していく。ブランディング戦略も見直して、当面の目標である年商1億円を早々に突破したい」と天田専務。逆境から、勇気を持ってテイクオフした同社の挑戦を応援したい。

製品の加工作業