(上写真)滋賀県で結成されたヨシ・プロジェクトチームのメンバー
繊細で表面の光沢も美しいその国産ボードは、構造材としてよりむしろ、人の目や肌に直接触れる内装材や家具材として着目され、図書館や学校など公共施設を中心に納入実績が増加中。一方、その独自技術によって間伐材以外の素材でも活用されはじめている。
そもそも、ストランドボードとは基本的に薄く削った木片を乾燥させ、合成樹脂接着剤を加えて高温・高圧でプレスして成型したものだ。輸入品の多くは配向性ストランドボード(OSB)と呼ばれるもので、長さ30㌢㍍ほどの木片を一方向に配列して成型されている。対して、エスウッドのものは木材を細かい削片に加工し、独自開発した特殊な糊で板状に成型するランダム・ストランドボード(RSB)を主軸としており、強度だけでなく調湿性、断熱性など無垢材ならではの特性、風合いを残すことに成功している。ちなみに、同社の前身は間伐材の用途開発を目的とした協同組合であり、長田剛和社長(42歳)によると「先代(創業者)の念頭にあったのは地球環境問題のための社会貢献。放置された間伐材をマテリアル(素材)として使えないかという発想だった」という。そんなこだわりが詰まった同社のRSBの評判は上々で、ある東大教授の「何ですか、このきれいな材料は」という感想が口コミで広がり、今では小中学校などの内装・壁材・掲示板のほか、店舗の陳列棚の材料としても絶大な支持を集めるまでに。顧客も北海道から沖縄にかけて広がっている。
同社ではこのRSBの技術を生かした異業種連携も展開中だ。たとえば、地元・岐阜県では異業種交流会を機に、エコ・マテリアル開発が前進中だ。また、熊本県八代地域ではこれまで焼却処分されてきたイグサの端材を活用したボードづくりに着手している。さらに、滋賀県では管理者の減少が問題になっている琵琶湖畔のヨシ(アシ)のRSB化に乗り出した。ちなみに、このヨシの案件ではボード製作だけでなく、地域と「ONEチーム」でヨシ刈りや現地調査、地元企業との情報交換などに取り組んでいるという。
こうした事業の一方で、2、3年前からは地元の子どもたちに岐阜の山や木を知ってもらうための「木育」教室をはじめた。ヒノキやスギ、ブナなどの木を集めてチップをつくり、色や香りの違いを感じてもらいながらボードづくりを行っているという。
そのほかにもコーヒー豆カスや茶殻のボード化など、さまざまな案件を手掛けている同社だが、どの事業においても共通しているのが「利他の精神」だ。「仲間とつながり、ともに社会貢献を実現していくことを大事にしている。それが結果的に会社の成長や売り上げ、収益につながれば」と長田社長。新しい挑戦ははじまったばかりだ。
㈱エスウッド
岐阜県各務原市須衛町7-74-5
☎058-379-3023
設立 1999年
従業員 約10名
資本金 100万円
s-wood.jp
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