(上写真)看板商品のおぼろ豆腐とゆし豆腐。濃厚な味が魅力だ

ひと口ほおばった瞬間、濃厚な味が口のなかに広がる。沖縄県宮古島の豆腐店「宮古島まごとうふ」(下地直弥代表)の看板商品「濃厚おぼろ豆腐」が、プルプルとした食感と大豆本来の濃い味わいが楽しめると、地元で評判になっている。

厳選した非遺伝子組み換えの大豆を使った濃厚な豆乳をやわらかく固めた逸品だ。その味は高く評価され、2018年の全国豆腐品評会で最優秀の農林水産大臣賞を受賞した。
そのほか、地釜で豆乳を炊き上げる「島豆腐」も売れ筋だ。表面をうっすらと焦がし、地釜独特の風味を移した同店の島豆腐は、チャンプルーなどの炒め物をはじめとして現地では揚げ物、煮物、汁物に幅広く使われている。一般の豆腐が大豆を水に浸してつぶした呉を煮てからこしたり、搾ったりして作るのに対し、島豆腐の製法は「生搾り法」と呼ばれ、呉を煮ずに搾って豆乳とおからに分けてから煮込んで固める。重さは1丁800~1000㌘と一般の豆腐の3倍ある。固くて食べ応えがあり、調理しても崩れにくいのと、水で冷やさず、温かいままの状態で提供されるのが特徴だ。「まごとうふ」の下地氏は、この島豆腐を固くしすぎず、「水分の抜き方を調整することでやわらかさを残す」ことにこだわっている。また、島豆腐の製造過途中でできる「ゆし豆腐」も評判がいい。大豆の栄養分をふんだんに含んだスープと一緒に食べるのが流儀で、好みの味つけで味わう。同店の商品は200~400円台が中心で、新型コロナウイルスの感染拡大で売り上げが一時落ち込んだものの、開業以来、順調に販売実績を伸ばしている。

地釜で炊き上げる島豆腐
「おばあの味を守りたい」と語る下地代表
島内の公設市場でも販売している
              

この店の開業は15年、キッカケは宮古島出身の下地氏が個人で豆腐づくりを長年手掛けてきた「おばあ」(祖母)の店を引き継いだことだった。そのため「店名は『おばあの孫』に由来している」と下地氏。「基本的に伝統製法に則り、おばあ時代の味を守っている」という。一方で「島内でも若者を中心に豆腐ばなれがすすんでいる」と危機感を抱き、2代目ならではの若い視点を生かし、おぼろ豆腐を使った「バスクチーズケーキ」やおから素材の「マフィン」など、豆腐関連のスイーツを開発し、若い層の取り込みをはかっている。
ちなみに現在、島内には個人経営を中心にいくつもの豆腐店が存在するが、伝統的な島豆腐の製造と販売の両方を手掛けているのは同店だけだという。近年は衛生基準の厳格化で島内でも地元豆腐店の撤退が目立つが、下地氏は「島豆腐を作りつづけ、伝統を守ることが地域貢献につながる」と使命感を抱く。そして「将来は自前の豆腐を料理に組み入れた飲食店や豆腐作りを体験できる施設をつくりたい」と豆腐を宮古島の観光に組み込む構想を描いている。