(上写真)電機故障解析からナノレベルの物理解析までの一貫した故障解析能力が強み

ロシアのウクライナ侵攻によってクローズアップされたエネルギー問題。原発再稼働と並び、再生可能エネルギーの代表格である太陽光発電が話題に上るなか、故障の際の措置や再利用などをめぐる太陽光パネルの扱いにも視線が注がれている。

㈱アイテスはそうした太陽光パネルの「遠隔安全診断システム」の開発をすすめている。現在、大手電力会社と共同実験中で、データ解析などの最終調整を行っているという。
アイテスの母体は日本IBM野洲事業所の品質保証部門。半導体のICやウエハー、材料など多様な分析・解析実績を持つ。半導体に関する電気故障解析からナノレベルの物理解析まで一貫して行える故障解析能力に強みがあり、太陽光パネルについては「光学特性」「電気特性」「材料特性」といった解析能力に定評がある。それらの知見を生かし、検査装置の開発も行っている。今から1年前、住宅・低圧太陽光発電設備向け点検装置「eソラメンテ」を開発・販売し、新エネルギー財団主催の「令和3年度新エネ大賞」の最高賞である経済産業大臣賞を受賞。開発中の太陽光パネル遠隔安全診断システムはそれらの強みを生かした取り組みの成果で、「防災」を大きな目的としている。五十嵐靖行社長(62歳)によると「パネルの状態を監視・分析し、劣化や発熱につながる故障状況など、多岐にわたる発火の予兆を検知し、ネットワークに自動的に情報を送る仕組みにより重大事故を未然に防止する。現在の実験には国の研究機関も参加しており、今年中に実用化できる見通しだ」という。

「顧客が満足する『もの』ではなく、満足する『こと』に発想の原点を置いてほしい」と願う五十嵐社長
パネルの再利用の可能性を1分以内で確認できるリユースチェッカー
太陽光パネルがリユースできるかどうかをチェックする担当者
                        

販路については「コスト面の課題は残るが、まずは工場屋根パネルなどの産業用からスタートしたい。その後、火災防止の観点から住宅メーカーでの需要が高まるのではないかとみている」と五十嵐社長。その前段階としてリユースチェッカーの販売にも力を入れていく、としている。「今後は中古パネル市場が盛り上がるはず。当社のリユースチェッカーは中古パネルが利用できるかどうかを1分以内に確認できるので、平時はもちろん、自然災害時などにも大いに必要とされるのではないか」と力を込める。
また、グローバルな競争にさらされているパワー半導体の関連事業にも本格的に乗り出すという。最近はシリコンのほか、青色発光ダイオードの材料となる窒化ガリウム(GaN)や次世代半導体といわれる炭化ケイ素(SiC)などについて、大手メーカーなどから解析などの試験依頼がきているそうだ。「もともと電子部品の分析・解析など評価事業が大きな柱であるだけに、積極的に取り組んでいきたい」と五十嵐社長は意気込んでいる。
今年、創立30周年を迎えたアイテス。自律分散型社会や循環経済を視野に入れた事業で、さらなる飛躍を遂げていきそうだ。