(上写真)小ぶりでやや太く、甘くてほどよい酸味が特徴の「ぐしちゃん銀バナナ」

コロナ禍による通販人気の高まりによって、南国・沖縄の〝新しい味〟が発掘された。モチモチの食感、甘味とほどよい酸味が特徴の独自品種「ぐしちゃん銀バナナ」がそれだ。

通販開始から約3年、当初は1カ月に2、3件だった注文が今や口コミやSNS効果も相まって月50件以上に。ファンは全国に広がり、今夏からは神奈川・横浜市内の果物専門店にも常時出荷し、販売されることに。栽培しているのは沖縄本島のほぼ南端、美ら海に臨み、標高163㍍の八重瀬岳をいただく、具志頭のなだらかな丘陵地。サトウキビの生産が盛んなこの地でバナナの栽培がはじまったのは約30年前だ。久保文乃代表(32歳)の父、栄氏(60歳)が500坪の敷地に200株のバナナの木を植え、独学で栽培を開始した。そして無農薬にこだわり、失敗や挫折を繰り返しながらたどり着いたのがタイで栽培されている今の品種、光の加減で銀色に見えることから「銀バナナ」と名づけられた。文乃代表によると「長さはスーパーなどで購入できる一般的なバナナの半分くらいだが、かなり太め。糖度は完熟すると27度から30度で、夏場だと33度にもなる」という。一般的なものの糖度が17~24度だから、その甘さはいわずもがなだ。ちなみに、創業者の栄氏の本業は理容師で、長年にわたって二足の草鞋を履きながらバナナ栽培に励み、約3年前に文乃代表にバトンタッチしたという。その間、農園は着実に拡大し、現在は2000坪で約500株のバナナを栽培するまでになっている。

沖縄でのバナナ栽培普及にも力を入れ、生産者同士で切磋琢磨したいと語る久保文乃代表
30年もの歳月をかけて独学でバナナを育てた久保栄氏(右)
海に面した自然豊かな具志頭。銀バナナは南国のこの地で育つ
                         

もちろん、栽培レベルもこの間に格段に向上した。たとえば、収穫時には高さ4~5㍍のバナナの木に梯子を架け、ひとりが上で実を採り、ひとりが下で受ける。その重さは30~40㌔㌘に達するが、「贈答品なのでキズを付けないように慎重に作業する」という。また「台風被害が多い、虫がつきやすいといった理由で、沖縄ではバナナ栽培を敬遠する人が多いが、丁ねいに育てることで安定した収穫量を維持することができるようになった」と文乃代表は話す。だが、依然として県内での沖縄バナナ(島バナナ)の収穫量は80~90㌧と少なく、沖縄の果樹生産量(パイナップル除く)のわずか1㌫にとどまっているという。
こうしたなか、文乃代表はパインやマンゴーが主流の沖縄ギフト業界に銀バナナで参入。SNSなどでこのバナナのことを発信したところ、地元メディアで取り上げられるようになり、徐々に知名度が向上したという。また、購入者からは 「バナナ嫌いの子が食べるようになった」「はじめての食感」と評判で、リピーターも順調に増加。この勢いに乗って、近年はギフト商品の拡充にも注力し、3㌔(約30本)7000円と2㌔(20本)6000円に加え、今夏から1~1.5㌔の小パッケージの取り扱いもはじめるという。
「地元で苗の販売などもはじめたが、引きつづき銀バナナの普及に力を入れていきたい。そして、あらたな作り手とともに切磋琢磨していきたい」と笑顔を見せる文乃代表。銀バナナが沖縄の特産品として定着する日もそう遠くはないかもしれない。