(上写真)自慢の技術力が生かされた外径5.7㍉の超小型電磁弁
それを機に、同社は持株会社制に移行するとともに、さらなる飛躍を期して思い切った改革を断行した。中小企業では異例の社内カンパニー制を導入したのだ。分析装置用製品開発など主力事業を担う「流体制御システムカンパニー」と海外事業や将来に向けた新規の事業開拓を目指す「未来創造カンパニー」の二本立てとし、それぞれ中途採用の人材を社長に据えた。
未来創造カンパニーを率いる平谷治之社長は「安定した顧客の注文を受けて収益を稼ぐ仕事と、個別に試行錯誤を重ねる儲かりにくい仕事では、異なるマネジメントが必要だ。当社ではプッシュ営業でつぎつぎに世界中の未開拓市場を開拓し、もうひとつの組織である流体制御システムカンパニーに引き継いでいく」と話す。
平谷社長は博士号を有する研究職出身ながらMBAも取得し、経営企画や新規事業開拓、海外法人社長など多彩なキャリアを経て、18年に入社した。そして、トップの指示や顧客からの注文を待ち受けて対応するというスタンスを改革する必要性を痛感。現在は「人材育成なくして企業の成長はない」という考えのもと、YouTubeを使った「平谷塾」の開講やベンチャー企業への出向を通して、「主体性を持って行動する自立した社員」の育成にも力を注いでいる。もちろん、あらたなビジネスチャンスにも果敢にトライしており、NASAやJAXAとの取引実績もある宇宙ビジネスをはじめ、食糧生産やドローンへの流体制御装置搭載など、さまざまな可能性を模索中だ。
そんな同社が将来を見据えて戦略的に取り組んでいるのが、3年以内に現地法人の設立と工場生産の開始を目指すインド事業だ。超大国のはざまで中立性を保ち、グローバル・サウスのリーダー国として中東やアフリカに力を発揮するインドでのグローバルビジネスを展開し、インドの理工系大学で社員にインターンを行わせ、モノづくりの技術移転をはかるという。平谷社長は「大きな構想だが、インドのモノづくりに貢献しつつ、当社も将来の顧客を確保できればWin‒Winだ」と自信を見せる。
「地方の町工場」から「真のグローバルニッチトップ企業」へと進化を遂げつつある高砂電気工業。今後、その改革がどんな成果を上げるのか、大いに楽しみだ。
高砂電気工業㈱
愛知県名古屋市緑区鳴海町杜若66
☎052-891-2301
創立 1959年
従業員 266名
資本金 9000万円
takasago-elec.co.jp
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