(上写真)幕張メッセでの展示会で披露された三輪バイク「GYRO CANOPY」

ハイレベルな板金加工技術を武器に、創業以来、自動車の総合試作メーカーとして成長を遂げてきた㈱オーエイプロト。その実績を背景に今、あらたなステージに挑戦している。そのひとつが昨年8月に発足した「OA100プロジェクト」、今春には限定100台の金属製ゴミ箱(70万円)を発表し、話題を集めている。

「『ゴミ箱本体の魅力を高めることで路上ポイ捨て撲滅しよう』という発想でつくったが、その後、改良を加え、今はインテリアアイテムとして販売している」という。そして、第2弾として開発したのが価格150万円の三輪バイク「GYRO CANOPY」だった。4月中旬、千葉・幕張メッセで開かれた新世代自動車などの展示会「オートモビルカウンシル2023」では、この金属色のシャープな外観と機能的なつくりが来場者たちの目を惹きつけた。これまでは「受注ベースの試作機づくりばかりで守秘義務などの制約があり、自社の技術力を表立って世間にアピールすることができなかった。そのジレンマにいつも口惜しい思いをさせられてきた」と大坪義彦会長(58歳)。

「オリジナル商品を手掛ける緊張感とやりがいが、試作品の品質や技術力向上にもつながっていく」と話す山名社長
試作品開発に生かされる優れた板金技術はオーエイプロトの財産

こうした評価を受けて、山名経行社長(57歳)はあらためて「これからも職人技と最新加工機器の精度を活用し、100人の心に響くモノを100個だけつくっていきたい。そして100年後にも残るようなモノづくりを100㌫の力で手掛けていきたい」と思ったそうだ。もっとも、すべてをオリジナル商品に切り替えるわけではなく、「引きつづき大手メーカーはもちろん、ベンチャーからの受注案件にも応えていきたい」と山名社長。現にその実績は折り紙つきで、新幹線500系の内装や東京メトロの車両下部点検用カバーなどでもトップシェアを誇るという。また、大手メーカー数社の建設機械のキャビン(運転席部)も受注しているほか、最近ではスタートアップ企業から近未来キックボードの試作品の依頼もきたそうだ。だが、試作品市場には厳しい現実も待ち構えている。「とくに自動車業界ではAIの活用やCAE(計算機援用工学)解析技術の向上で実車実験や検証の必要性が減少してきている」という。そして、だからこそ「今後はオリジナル商品に活路を見出す必要がある。現在はゴミ箱や三輪バイクにつづいて、アルミと皮革製のバックパックを開発中だ。あらゆるモノをつくれる会社として、成長、発展を遂げていきたい」と山名社長は力を込める。ちなみに、同社の社名は「オリジナル・アクティブ・プロトタイプ(はじめて世の中に出る創造性を持った物を積極的かつ活動的につくりだす)」に由来しているとのこと。まさに名を体現するような道を歩んでいる。