秋田県大仙市の㈱MARUCHO―WORKS秋田は、国産100㌫の高品質カットソー製造にこだわるアパレルメーカー、㈱マルチョウ(東京都墨田区)のグループ工場だ。同社が従来のOEM事業に加えて新しくはじめたODM事業の生産拠点として、2021年から稼働しているという。

「ODM」とは委託者のブランドで製品の設計・開発段階から生産までを手掛ける方法のことで、生産のみを引き受ける「OEM」よりも収益力が高い。「当社のODM製品は独自開発の改造ミシンによって縫製品につきものの縫いしろの幅や数を極限まで減らし、これまでにない着心地やデザイン性を実現している」と話すのは、長谷川剛社長。エストネーションやシップスといった有名セレクトショップで取り扱われているほか、複数の自社の独自ブランドでも展開しはじめており、22年9月にははじめてテレビの通販番組にも登場、23年5月には阪急うめだ本店での単独店でのポップアップ販売も開始した。同社がこのODM事業に乗り出したキッカケはコロナ禍だった。経済の停滞でアパレルブランドやセレクトショップの撤退や店舗縮小が相つぐなか、「OEM事業に限界を感じた」と長谷川社長。秋田工場がもともと高い技術力を持ち、改造に適した中古ミシンも大量にあったことから、ODM事業に乗り出すことを決意、同社が得意とするミシン改造やブランディングに集中的に取り組んだという。最初は「現場との間で『できない』『やってほしい』と押し問答を繰り返し、何度もあきらめかけた」が、大仙市や地元小学校などに同社特製の柔らかい生地で着用感を良くした立体縫製マスクを寄贈したことが転機に。「市職員や子どもたちが大いに喜んでくれたことで、工場スタッフたちが『服作りを通じてこの喜びを生み出したい』と一致団結、何種類もの改造ミシンを開発し、設計・開発を行える体制を整えた」そうだ。

「コロナ禍のおかげで新しい景色が見えた」と話す長谷川社長
工場内の作業風景

そのかいあって、23年度の同社の売上高に占めるODM事業と自社ブランド事業のシェアは10㌫に達する見込みで、決算も2期連続の赤字から黒字に転換する見通しに。さらに長谷川社長はこの勢いにノッて「秋田工場で、従来の多品種少量生産の工程とは真逆の、人の代わりにミシンが移動していく縫製ラインを備えた画期的なスマートファクトリーの準備をすすめている」という。「コロナ禍のおかげで、オンリーワンの新技術を確立することができ、新しい景色が見えてきた。これからも秋田を舞台に、新しい挑戦に取り組んでいく」と意欲を燃やしている。

独自開発した改造ミシンでの縫製作業