8月27日、龍郷町(鹿児島県大島郡)と一般社団法人E‘more秋名(村上裕希代表理事)共催のシンポジウム「~持続可能な地域社会へ~新たなまちづくり最前線」が同町りゅうがく館講堂であった。急激な人口減少が進む過疎地での取り組み事例が紹介されるなど、新たな町づくりへ視野を広げる機会となった。旅行・宿泊業、webサービス、教育関係者など幅広い業種の28人が受講した。

基調講演Next Commons Lab(東京)代表理事・林篤志氏。高知県で、地域おこし協力隊の仕組みを利用したローカルベンチャー創出事業に取り組んだ事例を挙げ、「起業家を育てる」ことが町おこしの目的の一つと説明した。

人口減少が進む地域にあっては、民間企業が撤退することで税収が減り、従来型の公共サービスやインフラが維持できなくなるとして、住民が「第2のLocal Coop)を構築する新たな考え方が必要と訴えた。

地域住民による共同体運営のマネジメント組織が公共サービス(買い物支援、地域電力、資源循環、教育など)を担おうというもの。運営には、域外からの資金調達が必要で、2004年の中越地震で急激に過疎化が進んだ新潟の旧・山古志村での取り組みを紹介した。

人口が2200人から800人になった村民からの要請で林氏が取り組んだのは、ブロックチェーン技術を用いた「デジタル住民票」発行。特産品のニシキゴイをデザインしたデジタルアートを販売、世界中から1500万円の資金を集めた。これを原資にさまざまなプロジェクトを実施、購入した人の3割が山古志を訪れ、関係人口の増大にもつながったと話した。

パネルディスカッションも行われ、内閣府地域活性化伝道師の伊東将志氏も加わった。生まれ育った三重県尾鷲市は60年で人口が半減、18年には火力発電所が撤退し「この町はもうだめだ」という声が聞かれたという。

絶望的な状況の中、高齢化社会や過疎化が進む日本を、ヨーロッパから視察にくると聞き、〝世界の最先端にある〟と発想を転換、すべてが前例にない先進的なことと考え、企業とのプロジェクトなどに取り組んでいるという。

聴講した映像制作などを手掛ける奄美市の傳義久さん(48)は「ヒントになった。島用にカスタマイズしたビジネスを創生したい」と意欲を示した。

2023年8月28日 奄美新聞