東京都心からのアクセスが良く、豊かな自然と特産品に満ち溢れた東京多摩地域。本コーナーでは、東京都商工会連合会 多摩観光推進協議会と連携し、新しい多摩の観光の魅力をお伝えしていく。今号のテーマは東京多摩の「エクストリームスポーツ(Xスポーツ)」。多摩の広々としたフィールドでいったいどんなスポーツが体験できるのか。さっそく紹介したい。

日本人選手が史上最多、58個のメダルを獲得した東京2020オリンピックから2年。来年には2024パリオリンピックの開催が予定され、日本国内では各競技の選手選考が本格化している。なかでも注目されているのが「エクストリームスポーツ(Xスポーツ)」だ。これは「過激な (extreme)」離れ業をウリとし、その速さや高さ、華麗さ、カッコ良さなどを競い合うスポーツのことで、前回のオリンピックからスケートボード、スポーツクライミング、サーフィンなどが正式種目となったのを機に競技人口が急増している。東京多摩地域でも、このXスポーツが盛り上がりつつある。首都圏からわずか30分~1時間でアクセスでき、広大な土地とバラエティに富んだ地形を有することから、多摩はさまざまなXスポーツの練習や体験のフィールドとして人気なのだ。今号ではそのなかからマウンテンバイクとスポーツクライミングの施設を訪ね、本誌記者が実際に体験してみた。

都内唯一のマウンテンバイクパーク、Smile Bike Park にて。インストラクターの内藤仁雄さんが披露してくれたジャンプ
スポーツクライミングが楽し めるWall & Studio にて。都内最大級、5 ㍍のウォールを軽々と登っていくインス トラクターの田代浩介さん

マウンテンバイクで稲城の
山中を駆け抜ける

まず訪れたのは稲城市の丘陵地にある「Smile Bike Park」、知る人ぞ知る都内唯一のマウンテンバイクパークだ。運営会社である㈱グリーンライフ企画管理部の栗生晴美さんによれば、もともと同社ではこの地でサバイバルゲームフィールドを運営していたが、縁あってマウンテンバイクのコースを整備することになったそうだ。「地元のバイカーらが集まり、意見を出し合ってつくられたコースはバリエーション豊富で初心者から上級者まで楽しむことができ、プロ選手のトレーニングにも使える。2017年のオープン当初からそのことが話題になり、今では地方からわざわざやってくる人もいる」そうだ。「とくに最近では初心者や家族連れ客が多く、裾野が広がっているのを感じる」とも。
しかしマウンテンバイクといえば、自転車で起伏に富んだ地形をものともせず攻めていくまさにエクストリームなスポーツ。初心者がいきなり挑戦して大丈夫なのだろうか。というわけで、まったくの初心者である本誌記者がインストラクターによるプライベートレッスンに参加してみた。すると、丁ねいな指導のおかげで30分ほどで基本フォームを身につけて急坂もラクに上り降りできるようになり、レッスン後半には、スリルを楽しみながらスラロームコースなどを走れるまでに。稲城の自然に囲まれながらのスポーツは実に心地良いものだった。
今後、このSmile Bike Parkでは、夏から秋にかけてキャンプ場もオープン予定とのこと。マウンテンバイクでひと汗かいた後、シャワーを浴びたらそのまま静かな山中でキャンプを楽しむ、そんなアウトドアアクティビティが、自然豊かな多摩ならではのあらたな観光の目玉になりそうだ。

Smile Bike Park 内にオープン予定のキャンプ場(全11 サイト)。都市 の夜景を眺めながらのキャンプは最高だ
味の素スタジアム(調布市)で開催された「みたかわんぱくスポーツ DAY」での1 枚。Smile Bike Park ではさまざまなイベントに参加してマ ウンテンバイクの魅力発信にも努めている

【初心者でも楽しめる‼ マウンテンバイク(Smile Bike Park)のレッスンのポイント】
まずは平地で「デコボコ道で自転車が上下に揺れる際には軽く脱力して衝撃を緩和する基本フォームを習得する」「ブレーキには左右それぞれ指1 本だけをかけ、急ブレーキをかける際には腰をグッとサドルの後ろまで引いて止まる」といったマウンテンバイクの基本の「キ」を約30 分ほど習う。その後は川原の土手と同じ角度の斜面を上り下りしたり、パンプトラック(起伏のある凹凸のコブが連続した波状コース)を「プッシュ&プル(バイクを押し出す&引き上げる」と呼ばれる体重移動のテクニックによって、ペダルをこがずに走る練習を繰り返す。最後は急坂にいくつもの急カーブがあるスラロームコースで本格的なマウンテンバイク体験へ。覚えた技術やコツを駆使して、自分の上達を実感しながら走る。ここまでのレッスンで約2 時間、実に盛沢山の初級編だ。このフィールドで引きつづき練習すれば「パンプトラックでのジャンプなど、よりアクロバティックなライドにも挑戦できるようになる」とインストラクターの内藤仁まさ雄お さん(50 歳)。何事も基礎が肝心ということか。
東京都稲城市坂浜734 070-4475-4472 http://smilebike.tokyo/
覚えた技術やコツを駆使して、急カーブの多いスラロームコースを走る

自分の体ひとつで垂直の
壁を登り切る達成感

ついで、スポーツクライミングの一大拠点があるというウワサを聞いて、昭島市の複合商業施設「モリパーク アウトドアヴィレッジ」内にある「Wall & Studio」へ。
スポーツクライミングとは、垂直にそそり立つ壁(ウォール)をカラフルな「ホールド」(人工の石)を使って自身の体ひとつで登っていく競技のことだ。近年、世界大会で日本人選手が活躍するようになり、東京オリンピックから正式種目となったこともあって競技人口が一気に増え、ジムも急増している。が、東京都内ではスペースを確保するのが難しいため、高さ2~3㍍ほどのウォールを備えた小さな施設がほとんどだ。そうしたなかにあってこの「Wall & Studio」はジムの広さがナント367平方㍍、都内最大級の5㍍の高さを誇るボルダリングウォール11面を完備、さらに屋外には高さ16.5㍍、幅10㍍のリードクライミングウォールと日本で唯一4レーンあるスピードクライミングウォールも設置されている(※)。運営事業者である東商アソシエート㈱クライミング&アミューズメント事業部の藤本暁さん(34歳)は「スポーツクライミングの3種目すべての国際大会を開催できることが当施設の特徴だ」と胸を張る。
レッスンはベテランのインストラクターが独自の課題やカリキュラムを作成して行っているほか、もちろん初心者や子ども向けのプログラムも充実、「KIDSスクール」や毎週末に実施している「はじめてのボルダリング」などが人気だという。さっそく本誌記者が体験してみると、最初は「これはゼッタイにムリ、登れない」と思えたコースもコツを覚えるとスムーズに登れるようになり、みずからの体ひとつで壁を登り切る達成感はヤミツキになりそうだ。事実、「腕力や筋肉よりも体の動かし方やバランスの取り方などが重要なので、女性や子どもも楽しめるスポーツ」と藤本さん。「地域の習い事、健康増進の一環で通ってくれる地元住民が増えている」そうだ。

※ スポーツクライミングは、壁を登る速さを競う「スピード」と複数のコースを制限時間内にいくつ登れた
かを競う「ボルダリング」、ロープで安全が確保された競技者が壁を登り到達高度を競う「リード」の3 種目。
Wall & Studio の屋外には、高さ16.5㍍、幅100、㍍のリードクライミ ングウォールとスピードクライミングウォールも

【初心者でも楽しめる‼ スポーツクライミング(Wall & Studio)のレッスンのポイント】
今回、記者が体験したのは、垂直(または前傾斜)のウォールを「ホールド」(石)を使って登っていく「ボルダリング」。ホールドがカラフルに色分けされているのは色ごとに難易度が分けられているからで、それぞれのコースで手や足を置いていいホールドがきまっており、一番上の「G(ゴール)」と記されたホールドを両手で3 秒間保持したらコースクリアとなる。このボルダリングのポイントは、むやみに腕の力に頼ってはいけないということ。難易度が低いうちは筋力でムリやり登れても、チョッと難しくなるともう歯が立たなくなる。インストラクターの田代浩介さん(55 歳)によれば「腕で体を引き寄せず、足で体を押し上げるように登る」「つねに手足のいずれか3 点で三角形をつくってバランスをとる」のが基本。これを実践してみると、本当に身軽に石から石へと登ることができて驚いたが、この基本を維持しつづけるのが難しい。油断すると腕に頼りすぎて途中で力尽きたり、バランスを失って足が外れてしまったりするのだ。聞けば「筋力がない女性や子どもは、工夫して登ろうとするので上達が早い」とか。なかには「懸垂を1回もできないがボルダリングは上級者」といった女性もいるそうなので、興味がある方はぜひ臆せずチャレンジしてみてほしい。
東京都昭島市田中町610-4(モリパーク アウトドアヴィレッジ内) 042-510-7183 https://moripark-climbing.tokyo/
インストラクターのアドバイスを受けながら、 基本に忠実に、慎重に登っていく

今回取り上げたマウンテンバイクの「Smile Bike Park」とスポーツクライミングの「Wall & Studio」は、いずれも国内トップクラスの設備を備え、かつ初心者や地元住民も気軽に利用できる地域に開かれた施設だ。新感覚のXスポーツが多摩のあらたな観光コンテンツとして広がりつつある。今後はこのXスポーツを通じた住民間の交流や地域活動などが盛んになるのではないか、といった予感も。多摩がXスポーツのメッカとなり、新しいスポーツコミュニティが生まれてくることに期待したい。

今回の記事については、東方通信社グループの YouTubeチャンネル『コロンブスTV』の番組「東京TAMAらん旅図鑑」で関連動画を公開中!ぜひご視聴ください!