世界自然遺産登録2周年記念「クロウサギの里コンサート」(NPO法人徳之島虹の会主催、徳之島天城町当部集落共催)が11月12日、同集落の「当部あがりまた広場」であった。地元中学生のオリジナル曲を交えたプロ・アマ混成楽団の演奏と、シンガー・ソングライター禎一馬さんのステージで家族連れなど観客約 400人を魅了。併せて「世界の宝」の生物多様性を育む意識を高め合った。

当部集落は、徳之島のほぼ中央部に位置し、世界自然遺産登録エリアに連なる山間の集落。国指定特別天然記念物アマミノクロウサギは生息密度が高いとも言われ、民家の庭先にも出没するほど。希少な自然環境の懐に抱かれた「クロウサギの里」づくりによる地域おこし活動を自然遺産登録以前から進めてきた。

「クロウサギの里コンサート」は、世界自然遺産の生物多様性を保全していく上で徳之島全体の課題に指摘されているネコ問題やロードキル(交通事故死)、ごみ問題への意識啓発も願い、同法人と集落の民間主導で企画した。入場無料。

あいにくの空模様だったが「茶処(どころ)・あがりまた」前の同公園特設会場は島内外からの観客たちで埋まった。虹の会の政武文理事長はあいさつで「夜行性のクロウサギは、今頃は寝ていると思うが、楽しい音楽を聴いて跳ね起きてくれるかもしれない」などと笑顔で話した。

コンサートは、当部で家族と暮らし作曲活動を続ける西阿木名中3年生の太田悠君(15)=キーボード=と、放送局のプロと島人(しまっちゅ)混成楽団「飯村佳之とゆかいな仲間たち」のコラボ演奏で第1部が開演。家族4人でIターンして4年目の悠君が大好きな海など大自然に溶け込み、優しい感性で紡ぎ出したオリジナル曲「大地を踏みしめて」「風を切る」など計5曲の解説とコラボ演奏にも称賛の拍手が送られた。

第2部は、ふるさと徳之島を拠点に、当部ではコーヒー栽培も手掛ける「シンガーソングファーマー」の禎一馬さん(天城町兼久)が、ご当地ソングに定着させた「ユイの島~徳之島~」などライブステージで沸せた。

「クロウサギの里」推進による〝限界集落脱却〟を提唱、推進してきた地元の松村博光さん(NPO法人クロウサギの里理事長、認定エコツアーガイド)は「このにぎわいは自然に対する関心の高さの表れだと思う。これを機に、徳之島全体に自然保護の意識が広がればいい」と笑顔で話した。

(2023年11月12日 奄美新聞)