■はじまりは空き家だった実家のリノベーションから

金沢市にある㈱SWAY DESIGNは、主に住宅・オフィス・店舗のリノベーションを手掛ける建築設計事務所である。その一方で、空き家や古くなった物件の価値を見直し、所有者と一緒に有効活用の方法を考える不動産事業を展開。持続可能な新しい不動産のあり方を提案している。

2018年に同社を設立した永井菜緒社長は一級建築士。大学卒業後、東京の建設会社に2年ほど勤めた後、転職しその後、独立。14年に地元の石川県にUターンして、個人事業主として開業した。

「Sustainable way(持続可能な方法)からSWAY と名づけた」と話す永井社長

それから1年後、空き家になっていた小松市内の築40年の実家を事務所兼ショールームとしてリノベーション。一角をそば店として改装し、長年、そば店を営んでいた両親にその切り盛りを任せた。「この改装が大きな転機となって、地元テレビや雑誌に取り上げられるようになった。そばを食べに来たお客さんから、『うちもこんなふうに直してほしい』と依頼されることも増えた」と永井社長は振り返る。

築40 年の実家を改装した小松市の事務所

■需要の変化に対応できる柔軟性を持ちながら

代表作のひとつは、金沢市内にある賃貸マンション「本多町コーポ」だ。築50年で3階建の全12室、もともと投資用不動産として1棟まるごと売りに出されていたが、空き室が多く買い手がつかなかった。だが、購入希望者から相談を受けて、1階はテナント用として、2、3階は住居用として貸し出せるよう内外装を改修。入居率100%の人気物件へと蘇らせた。現在、所有者からの依頼で管理も行っている。

「今後10年、20年経てば、また需要の変化が起こり得る。もしかしたら2階もすべて事務所にするかもしれない。時代とともに人の働き方も住み方も変わっていくが、それに合わせて改修をつづけていけば、次世代に物件を残すことができる」とのこと。

■空き家のマイナスの二者択一を三方よしの仕組みに変える

こうした考えをベースに、同社は空き家のコンサルタント事業「解体のサンピ」を立ち上げた。「空き家問題を抱える方の多くは、〝放置か解体か〟の二者択一で考えがちだが、総合的に利活用について相談できる窓口があれば、〝改修して住む〟〝人に貸す〟といった選択をする方も増えると思う。〝空き家問題は、まず建築事務所に相談〟という文化をつくりたい」と永井社長。

また、空き家を家主から借上げて改修し、入居希望者に貸すという事業も展開している。これにより家主は実質、維持費を負担することなく、建物を所有しつづけることができる。借上げ期間が終わったら、改修済みの物件が家主の手元に戻るという仕組みだ。空き家問題の解決のためにも、こうしたサービスが広まってほしいものだ。

鍼灸院、雑貨店などが入居する人気物件になった本多町コーポ

小塚真紀子さん  (公財)石川県産業創出支援機構 コンサルティング事業部経営支援課

太鼓判押します!!

(株)SWAY DESIGN の魅力は、洗練されたデザインセンスと課題解決に繋がる提案力。「人がいきいきと暮らし活躍できる 『箱』づくりが建築家の使命」という永井社長の信念に従い、お客さまの思いや解決したい課題を徹底的に共有しつくり上げた建物は、どれもウットリするくらい素敵です。一般的な建築事務所の枠を越えた思い切ったチャレンジをつづけるSWAY DESIGN の今後の活躍が楽しみです!