東京都心からのアクセスが良く、豊かな自然と特産品に満ち溢れた東京多摩地域。本コーナーでは、東京都商工会連合会 多摩観光推進協議会と連携し、新しい多摩の観光の魅力をお伝えしていく。今号で取り上げるのは「多摩地域SDGs体験日帰りモニターツアー」。檜原村の自然豊かな環境のなかで、参加者たちがどのように山地生態系と触れ合い、地域特有の植物や文化に親しんだのか、さっそくレポートしてみたい。

首都圏にもっとも近い大自然
檜原村の体験観光

東京都の西端、総面積の約93㌫が森林で急峻な山地に囲まれている檜原村。まさに大自然のド真ん中といった感じの村だが、東京都心から西へわずか約50㌔㍍、電車とバスで2時間たらずでアクセスできるのがオドロキだ。都心にもっとも近い大自然を満喫できる穴場スポットとして親しまれている。そんな檜原村の自然に触れ合いながら山地生態系を学ぼうという「多摩地域SDGs 体験⽇帰りモニターツアー」が、2023年10月17日に多摩観光推進協議会の主催で開催された。

森のなかの甘くてスパイシーな
香りのする植物探し

このツアーの参加者たちが訪れたのは、田中林業㈱内にある施設「フォレスティングコテージ」(檜原村本宿)。鳥のさえずりが響く緑豊かなコテージだ。まずは森林散策ガイドの田中千代子さんの案内で施設の近隣の山林を実際に散策してみることに。都会の喧騒をはなれ森林浴を楽しみながら歩いていると、田中さんがシソ科のセキヤノアキチョウジやミカン科のマツカゼソウなど、自生する植物を手に取って解説してくれた。なかでも参加者一同が注目したのがクロモジだ。クロモジは日本を代表する香木で、この多摩地域の山林にも数多く自生している。田中さんがそのクロモジの枝を切り取ると、周囲に甘くてスパイシーな香りが漂った。一同はその香りをどう表現するかで盛り上がっていた。

檜原村「フォレスティングコテージ」。森林の香りが心地よい
原村の森林を散策。樹齢180年の杉に触れ合う参加者

クロモジ化粧水、薬草バスソルトにチャレンジ

施設に戻ると、さっそくクロモジを使った化粧水と薬草バスソルトづくりのワークショップがはじまった。講師を務めるのは前出の田中さん。まず用意した簡易蒸留器を加熱、すると冷却器を通ってクロモジの香りイッパイの蒸留液がたまっていった。その後、ハーバルウォーターであるクロモジの蒸留液にトレハロースとグリセリンを加えれば、クロモジ化粧水のできあがり。一同はこのできたての化粧水をボトルに入れ、手の甲などに吹きかけてその香りを楽しんでいた。「レモンのようだけど、スパイシーでよい香り」と大好評だった。つづいてチャレンジしたのは薬草バスソルトづくり。乾燥させたクロモジの葉とバスソルトをオーガンジーの生地の生地で包むだけでできあがりだ。クロモジには神経痛、リウマチなどをやわらげる効用があり、クロモジの薬草バスソルトを入れたバスタイムはリラックス効果がバツグンだとか。参加者からは「香りが良いので、バッグのなかに入れてもよさそう」と活用アイデアがつきない様子だった。

クロモジからハーバルウォーターを蒸留抽出
甘くスパイシーな香りが魅力の自作化粧水
散策前にヨモギ茶で一服。効能を説明する田中さん
参加者全員が大満足‼ 多摩地域のSDGs ツアー

森林散策ガイド・クロモジワークショップ講師 ⽥中千代子さん(⽥中林業株式会社/森のてしごとや)

埼⽟県秩⽗市⽣まれ。江⼾時代からつづく田中林業に嫁いだのを機に檜原村で暮らしはじめ、今年で16 年目。野草料理や薬草茶づくり、草⽊染め、スワッグづくりなどを通して森の魅⼒を伝える活動を⾏っている。
Instagram「森のてしごとや」(@ morinotesigotoya)

今回のツアーを主催した東京都商工会連合会多摩観光推進協議会の駒治徳事務局長は「国連が提唱するSDGsをテーマにしたツアーをはじめて実施したが、手ごたえは十分、来年度も企画したい」と張り切っていた。これから先、自然豊かで地域資源に満ちた多摩地域を舞台にどのようなSDGsツアーが展開されていくか、楽しみである。