地産食物はブランドでもあり、地元以外で消費してもらうのは、通常の経済活動では至極当然なことではあるのですが、地産他消がふるさと納税を契機に加速しています。返礼品などに選ばれることで、認知度も消費量も一気に上がるという事象が数多く見られます。技術にしても、味や品質にしても、磨き続けた企業がきっかけ一つで日の目を見るのはビジネスとしても注目したくなります。業務拡大と新商品開発に舵を切り、新たな商品をこだわって開発した結果、地産他消で稼ぐ企業の優等生となり、見習うところが多いケースといえます。

■老舗企業が下した経営判断が新規顧客を開拓

信州産牛乳を使った「信州ミルクジェラート」がふるさと納税で注目を集めている。製造は「漬物の素」を主力商品とするニチノウ食品㈱。今夏販売から数カ月で、全国のふるさと納税返礼品サイト「ふるさとチョイス」において約1万点中第1位(11月14日現在)に躍り出る人気ぶりだ。2020年には通販限定で直火焙煎ナッツを販売するなど、老舗のイメージを覆す商品展開に乗り出している。

 

「直火焙煎」の文字が壁面に浮かぶニチノウ食品の本社社屋

■ニーズ変化に対応した老舗企業の大英断

新商品開発の背景には消費者ニーズの変化があった。さまざまな野菜を漬物に仕上げる「漬物の素」の需要は、食文化の変化や減塩など健康志向の高まりから頭打ちに。そこで、有賀哲哉社長(59歳)は「新商品を開発するという経営判断を下した」と話す。焙煎ナッツの袋詰めを請け負ったのを機に「他社に比べて少しでもおいしい無塩ナッツを」と直火焙煎に乗り出し、ピスタチオ、カシュー、アーモンドを発売し、ふるさと納税返礼品としても出品。年約5,000万円だった地元・箕輪町のふるさと納税の税収は5億円となり、うち3億円を同社のナッツが占めるまでになった。「相乗効果で通販も伸び、とくにピスタチオの人気ぶりがすごかった」と有賀社長は話す。

「違った形でのピスタチオ商品開発を模索した結果、ジェラートに行き着いた」と話す有賀社長
ナッツの袋詰めの請負業務をキッカケに直火焙煎事業に参入。今では同社の看板商品に

■地元支援の想いが流れを呼び込む製品開発につながった

このピスタチオ人気にヒントを得て開発したのが冒頭のジェラートだ。「『ピスタチオ』をネット検索すると、『ピスタチオのジェラート』がよく出てくるので、ピンときた」と有賀社長は話す。さっそく昨年7月には、自社のピスタチオと食べ比べるために上京。食べ歩いて「味に遜色ナシ、むしろ個性があってうまい」と自信を深めたそうだ。

ちょうどその頃、地元の牧場主から「牛乳が売れない」という声を耳にするように。実際、かつて120軒あった酪農家はいつの間にか10軒に激減していたという。ならば「ジェラートをふるさと納税の返礼品にすることで酪農家も支援できる」と考えた有賀社長は、社外人材に製造方法を学び、調理機を選定・発注し試作を重ね、ピスタチオ、アーモンド、チョコレート、信州ミルクという4種のジェラートをわずか半年で完成させた。

ちなみに、牛乳1リットルから16個のジェラート(3,000円相当)をつくることができる。これは納税額1万円の返礼品となり、「申込時に〈酪農家支援〉の項目をチェックすれば一定額が当該農家に納められる仕組みになっている」(有賀社長)そうだ。

現在、ナッツ、ジェラートにつぐ新商品の開発に取り組んでいるとのことなので、今後の展開にも期待したい。

社長の自社採点

品川将一郎さん (株)クオリティ・オブ・ライフ

ココが太鼓判!

「信州ミルクジェラート」は信州産牛乳の味がシッカリと感じられ、自然で甘すぎない味わいがあってとても食べやすい製品です。そのままでもよいですし、ほかのスイーツと組み合わせても馴染むので家族で楽しんでいます。とくにピスタチオのジェラートは直火焙煎ナッツがしっかり入っているので食感にナッツの存在感があるなど、ほかではなかなか味わえない製品だと思います。地域貢献をテーマに開発されたということで心から応援しています!