2030年には3兆4,000億円を超えるといわれるDX市場。その中でも注目のジャンルとして挙げられるのがデジタルサイネージの市場です。27年頃には約3,300億円になると見込まれています。システム、構築、ディスプレイなどの周辺機器や設置施工費用などがその内訳です。情報発信や広告、装飾などに用いられ、さまざまな技術と組み合わせて活用されています。直近でいえば、インバウンドや大阪・関西万博などでの利用がきっかけとなって、今後も進化が期待される分野です。この企業は最新技術を用いて、空間演出などで実績を積み上げています。その一方で、多様なアイデアを生み出す人材育成にも力を入れ、AIとは違う人間力で地域課題などにも取り組んでいる注目の企業です。

■DXを機器で支える急成長の事業を推進

旧石器文化を日本ではじめて紹介し、全国からたくさんの人が訪れる石の博物館、香芝市二上山博物館(奈良県)が2024年2月、AR(拡張現実)や3Dホログラム、プロジェクションマッピングなどを駆使し、「見える」から「魅せる」博物館に変身する。その空間演出を担うのが㈱ヒロホールディングスだ。「古都・奈良の企業として新しい技術で、地域のさまざまな困りごとを解決したい」という意気込みでこの仕事を引き受けた、と話すのは向山孝弘社長兼CEO(59歳)。

同社の主力事業はモバイルショップ(8店舗)の奈良エリアでの運営とDX関連のデジタル商材を扱うZeta(ゼータ)事業など。特にゼータ事業は19年の事業参入からわずか4年で業績が急拡大しており、DX関連機器の販売だけでなく、今や冒頭で述べたような空間演出の分野にも進出。ある信用金庫では調光ガラスを採用した防音設備から、仮想窓風景や巨大水槽、魚が泳ぐ水面などの映像を制作し、デジタルサイネージ(電子看板)に映し出す演出を行った。また、某ホテルの入口には無煤・無煙のバイオエタノール暖炉を設置して温かみを演出。これらの空間演出が業界で話題になっている。

「新しい技術で日本や世界の困りごとを解決したい」と将来を見据える向山社長兼CEO

■ビジネスシーンで活用できる最新機器を開発

向山社長は「このほかにもテレワーク空間を実現するため、天井設置マイクが話者を自動追尾するオンライン会議用シーリングマイク、遠隔操作でビデオチャットができる車輪走行型アバターロボット『Double3』などの最新機器を揃えている」と話す。最近では受付業務で活躍するAI映像対話システムや不審行動を解析・検知し、特定人物をスマホに通知するAI防犯カメラシステムなどの販売にも力を入れており、後者はすでに大手スーパーとの商談がすすんでいるそうだ。

遠隔操作で自走しビデオチャットでの会話にも対応するアバターロボット
最新のオンライン会議室での研修風景

■機器開発は人材育成に発展、社会の困りごと解消へ

一方、古都の企業として「職人の技術、魂を100年先まで残す」ため、奈良や浅草の職人たちと連携し、革小物を中心としたRebonally(リボナリー)ブランドも展開している。世界シェア97%を誇るクリーニングクロス「キョンセーム」などが看板商品で、そのリピート率のすごさに自身もビックリしているという。

こうしたアイデアを実現するため、向山社長は人材育成にも注力、「中国の古典、四書五経などを学び、人間力を磨いてもらうセミナーなども実施している」そうだ。

目下のテーマは過疎地対策。「自治体や米国企業などと連携し、過疎地における店舗の開設や運営の研究をすすめている」という。これからも社会の困りごと解消に全力投球していくとしている。

社長の自社採点

野原健司さん (公財)奈良県地域産業振興センター 金融・経営支援課 係長

太鼓判押します!

奈良県下では18 年ぶりとなる新規上場をはたした(株)ヒロホールディングス。急速にすすむDX 分野で同社の「Zeta(ゼータ)」事業が注目を集めています。とくに行動検知AI による画期的な「防犯・防火システム」やフォトグラメトリ―(3DCG)など、文化財などをデジタル

アーカイブで保存・活用する技術で成功を収めています。奈良の豊かな歴史や文化を守り、地域社会に貢献する同社の取り組みに期待が寄せられています。