物事にハマることを「沼」などといいますが、子供の頃から慣れ親しみ、大人になっても使うことが多い文房具の機能性、形、色彩などに魅了される人は少なくありません。近年、ガラスペンの流行で、インク沼にハマる人がSNSにたくさん見られます。情報交換や交流などもコミュニティを通じて積極的に行われています。単なる機能美や色彩美に限らず、文化や歴史を知り、知識や感性を豊かにしていけるいい趣味だと思います。元気企業では、インクに限らず、文房具に対する圧倒的知識を持ち、深い愛情を持ったスタッフたちが訪れる顧客を大いに満足させてくれます。さらに、地域性を文房具に持ち込み、新たな価値まで創出しています。まさしく、コミュニティの核として、市場をもけん引する企業だと思います。

■突き抜けた知識量とアイデアが飛騨高山に人を呼ぶ

江戸時代の木造商家が並ぶ飛騨高山に、全国の文房具ファンの支持を集める文具店がある。「いまい文具店」がそれだ。手狭な空間にさまざまな商品を詰め込んだ空間では、宝探し感覚で文具を選ぶ来店客も少なくない。商品アイテムの多さもさることながら、手紙を書くスペースなどもあり、それが旅行雑誌にも掲載され国内のみならずインバウンド需要も取り込んでいる。

こうした差別化のポイントについて「当社には文房具に関して圧倒的な知識量がある」と3代目の今井康貴店主(33歳)は自慢する。たとえばペンひとつとっても、お客の筆記方法やクセ、求めるデザインは千差万別。それらに的確に応えるアイテムを提案しつづけることで、いまい文具店は成長を遂げてきたという。もちろん、文房具好きをうならせるだけのラインアップになっており、ハイタイドやデルフォニクス、トラベラーズノートといった大都市圏の限定ショップなどでしか見られないブランドも取り揃え、SKU(ストックキーピングユニット=在庫管理数)はロフトやハンズの2~3倍の1万種を誇る。

PR のために「スタッフとともに旅館やホテルなど500 カ所以上にチラシを配った」と振り返る今井店主
四季の風情を感じながら手紙などが書ける珍しいスペースも

■秀逸!インク沼+観光スポットや40万点を誇るECのアイデア

その勢いに乗って、6年前には店舗2階にセレクト文具の「Pen Shop IMAI」を設立。極細から極太まで16種類の万年筆、40種以上のインクが試筆できるとあって文房具ファンの間で人気を集めている。また、四季折々の風景が望める2階にはテラス席があり、「旅先の思い出を綴るのにふさわしい」と地元住民や観光客の間で話題になっている。5年前からはじめたオンライン販売も順調だ。取り扱い点数は「文具としては国内屈指」の約40万点。シャープペンの口金のパーツや英・独製の替え芯などニッチなアイテムもあり、在庫は保有しないものの、スピーディに商品を取り寄せて販売している。

2 階のペンショップへの誘導階段はレトロ感タップリ

■地域とのコラボで生み出す文房具沼

今後の展開については、開設準備中の「インクショップいまい」(仮称)に要注目だ。「古今東西の何百種ものインクを壁一面に並べ、ガラスペンなどもレンタルしてワークスペースで体験してもらえるようにしたい」と今井店長。また、オリジナル商品の開発にも取り組んでおり、なかでも飛騨産の銘木を使った木軸シャープペン(限定販売)は販売開始から30分で完売するほど好評だった。「木材調達の目途がつき、今秋には再販売できる見通し。ふるさと納税の返礼品にしたい」と今井店長は意気込む。そのほか、飛騨高山の赤い「中橋」や「高山陣屋」などをイメージしたインクもほぼ完成しているとのことなので心待ちにしたい。これからも文房具を通じて、多くの人たちの知的好奇心をくすぐりつづけてほしいものだ。

店主の自社採点

鮎飛龍男さん 岐阜県よろず支援拠点コーディネーター

太鼓判押します!

岐阜県高山市街地中心部にある創業60 年、地元で人気の大型文房具店です。学習文具を求める学生から事務用品を求める事業所など、幅広い品揃えで地元のニーズに応えています。ペンショップはペン専門店として高級文具やデザイン文具を取り揃え、遠方から訪れる文具ファンも少なくありません。今井社長の文具愛溢れる、見て楽しい、選んで楽しい、文具ファンなら一度は訪れたいお店です。