「製造管理システム」で粗利増・労働生産性の改善を証明

多品種小ロット生産に加えて手作業も多く、製造管理が難しい食品製造業。その課題を解決するシステムとして、北陸最大規模のパン製造・卸売の㈱オーカワパンが独自開発した粗利の最大化を支援する生産・原価管理システム「Aralead(アラリード)」が注目されている。「製造現場の実績データから製品個別原価を算出する」という独自性が評価され、23年8月、㈱アラリードとして分社化をはたした。システムはすでに大手食品メーカーなど県内外 10社 11工場に導入され、食品製造以外の業種にも広がりはじめている。

ひと口に製造管理システムといっても、部署ごとにニーズは異なる。たとえば「営業部門では売り上げを伸ばしたい、製造現場では面倒で記入漏れの多い帳票などの作成を減らしたい、管理職は製造部門の労務費や工程管理を適切にしたい、経営幹部は利益率や生産性を向上させたいといった思いを抱いている」と話すのはこのシステムの生みの親で、アラリード社長の森本健嗣氏(50歳)。

森本社長がオーカワパンからの声掛けでシステム開発会社から転 職し、アラリードの前身の部署で働きはじめたのは17年のこと。後に製造部長として商品ごとの原価や粗利を算出する仕組みをつくり、それが経済産業省の「新連携事業」に認定され、汎用性のあるシステム開発に着手しはじめたという。システム開発にあたっては「生産・販売計画を入力すると、それに必要な原価や粗利、労働時間などを算出するシミュレーション機能を備えたほか、タブレッ ト入力によって進捗状況や工程表を工場内や事務所に設置したモニターで把握できるようにした。また、部署の垣根を越えて計画・実績を共有し、数値分析を踏まえて課題が把握できるような仕組みも搭載した」という。さっそく、 社内で活用してみたところ、20   年の運用実績で粗利が前年比2・6パーセント増、労働生産性が10ポイントも改善できたそうだ。

造現場の最前線でしかわからない情報をタブレットに入力
事務所などにある遠隔モニターで進捗状況などを把握できる

国内企業からの需要に手応え、東南アジア市場も視野に

この実績がしだいに広まり、パン製造大手の木村屋総本店をはじめ、菓子製造業、水産加工業など食品製造業を中心にシステムが採用されるようになったという。このほか、畑違いの鉄鋼業への導入もきまり、最近ではほかにも導入を検討している企業があるという。森本社長は「『労務費を含め製品の個別原価を知りたい』『現場情報が不透明で客観的数値を知りたい』という経営幹部が多い」と手応えを感じており、労働集約型産業が多い東南アジア市場での需要も視野に入れている。

試験運用やロードマップ提案の打診も多いが、まずは「知見の深い食品工場への納入を増やし、3年後には他業種向けも増やしたい」と意欲をみせる森本社長。「開発とDX支援チームそれぞれの人材育成が急務」としつつ、遠方企業へのシステム導入・運用を支援してくれる提携先の発掘も検討しているという。今後のさらなる活躍が期待できそうな元気企業である。

「3年後には食品製造以外の業種向けシステムも増やしていきたい」と話す森本社長
㈱アラリード社内の様子

岡田留理さん
(公財)ふくい産業支援センター 新産業支援部 ベンチャー支援担当

分社化してまだ短期間ながら、すごいスピードで「Aralead」システムの販路が拡大しており、目覚ましい成長を遂げている㈱アラリード。地方の課題解決型の企業として全国的にも好事例だと思います。「粗利の最大化」という経営上、見落としているところに着眼し、掘り下げたところが素晴らしいし、それがアラリードにとっても導入 企業にとっても差別化ポイントになっていると思います。製造現場からの提案という着眼点を含め、各企業にフィットした粗利最大化に向けた「提案力」が同社の最大の強みといえるのではないでしょうか。