観測衛星「てんこう」開発で攻めの一手、半導体事業拡大へ

製鉄関連機械の部品加工・組立を軸に70年以上の歴史を刻む機械部品メーカー、ニシジマ精機㈱はJISQ9100 (航空・宇宙分野の品質マネジメントシステムの国際規格)を取得し、地球低軌道 環境観測衛星「てんこう」の共同開発に携わり、2018年にはその打ち上げが成功。その軌跡は広く紹介され、技術力に着目した大手半導体製造装置メーカーから機械加工の依頼が舞い込むようになった。現在は新設した大分工場を舞台に半導体事業の拡大を推進している。

西嶋真由企社長(51歳)は15年の社長就任後、「独自色を出すため」に積極投資に踏み切った。船舶部品や製鉄所向け大型製品加工を担う本社・佐伯工場に加え、工場設備の機械修理・整備を行う下郡工場を稼働させたのもそのひとつだ。そして、航空関連事業を呼び込もうと発足した県の研究会にも参加。50社近くに上った参加企業は技術・資金力の壁に直面して多くが撤退したが、ニシジマ精機を含む2社のみが残留。後に電機・電子関連の2社を加えた計4社と九州工業大学とで観測衛星「てんこう」の開発に着手した。「超高難度の設計案に応え、打ち上げの衝撃に耐えうる軽量なアルミニウム        合金製の内部構造(電子部品を守る骨組み)を手掛けた。

若手社員たちもリーダーシップを発揮し、奮闘してくれた」と西嶋社長は話す。この4年越しのプロジェクトが成功した後、同社は半導体製造装置部品を主とする大分工場を22年3月に稼働。湿度・温度管理を徹底し、3次元測定器や5軸加工機も備えた。建設にあたっては「見栄えも社員が働きたいと思える環境のひとつだと考えてデザイナーを起用し、外観はJAXA、内装はIT企業をモデルにした」とのこと。また、佐伯工場は部品加工、下郡工場はメンテナンス、大分工場は半導体と専門分野をすみ分けることで「対応力を高めながらリスク分散もはかっている」という。さらに大分工場に関しては、半導体事業の将来性を見据え、第2、第3工場の新設を視野に入れているそうだ。

約 65cm角で重さ50kgの観測衛星「てんこう」の実物大模型
船舶部品や製鉄所向けなど小型部品から大型の機械加工を担う佐伯工場

社員平均年齢30代、次代へ「てんこう3」夢紡ぐ

こうした幅広い取り組みが奏功し、ロケット部品の案件が舞い込むなど、まさに狙い通りの展開になりつつあるニシジマ精機。つい最近も観測衛星「てんこう3」プロジェクトが始動、26、27年頃の打ち上げ予定で、平均年齢30代という社員たちの新しい目標も生まれた。「種子島宇宙センターで発射台のメンテナンスを行う」という西嶋社長の夢を若き後継者たちが紡いでいく。

「社員全員でロケットの打ち上げを見て感動した」と話す西嶋社長
青と白を基調に JAXA をモデルにした外観の大分工場

石田貴浩さん
㈱クニナリ 副社長

ニシジマ精機の工場は大型加工工場、精密加工工場、メンテナンス工場の 3 カ所を拠点とし、各工場がつねに最先端設備を導入し、新しい分野や製品にチャレンジしています。学生の工場見学の受け入れやこども食堂への支援を積極的に行っており、地域貢献にも力を入れています。今後、成長していく宇宙事業などの超精密分野においても、国内サプライチェーンを強化していく必要があり、モノづくり企業にとってニシジマ精機の動きはお手本となるのではないか、と思っています。