110年ぶり復活の「イムゲー」、サトウキビ原料のラム酒が切り札

国内消費量が長期的に低迷している酒類全般のなかでも、とくに沖縄県の地酒・泡盛の落ち込みが著しい。県酒造組合の統計によると、2022年の琉球泡盛の製造量は約1万4300klと最盛期の05年(約3万700kl)の半分を割り込んだ。地元泡盛業界を取り巻く経営環境は厳しく、泡盛メーカーにとって打開策の構築が喫緊の課題となっている。そうしたなか、石垣島の請福酒造㈲が泡盛に代わるあらたな酒の開発に意欲的に取り組み、活路を見い出そうと奮闘中だ。琉球時代に泡盛とともに盛んに酒造りが行なわれ、明治時代の酒税法で途絶えた芋焼酎の「芋下(イムゲー)」を約110年ぶりに復活させるなど新酒の開発に余念がない。

サトウキビを原料とするラム酒の製造もそのひとつで、20年に開発に乗り出し、翌年に第1号をデビューさせた。漢那憲隆社長(48歳)は「沖縄はサトウキビの一大産地。県産のサツマイモを使うイムゲーと同様、このラム酒も地元産の原材料で造る」と語る。ラム酒は泡盛と同じ蒸留酒で、古くから培ってきた技術とノウハウが生きている。漢那社長によると、サトウキビはそれ自体に糖分が含まれているため、こうじでコメを発酵させる泡盛と違い、製造工程のひとつが省けるという。

ラム酒の風味は一般的に、クセの強いヘビー系とクセの少ないライト系のふたつあるが、同社は「ヘビー系が好んで飲まれる欧米に照準を絞った輸出戦略を描いている」と、ヘビー系を造ることに。2000年代 以降にジャパニーズウイスキーが 評価された、そのおかげで、日本の酒は全般的に国際的に地位が高くなり、「成熟した欧米市場に食い込む勝機は十分」と自信を見せる。将来的には生産量全体の9割を海外向けに割り振る計画だという。

 

新酒造りに意欲的な社風を持つ製造な請福酒造
新酒開発の切り札のひとつのラム酒

沖縄の農業経営を下支えし、海外輸出へ挑む

同社はこうした新酒開発や販路開拓のかたわら、酒造りを通じて地域農業に貢献する理念も実践している。石垣島の農家も 従事者の高齢化、後継者不足で 耕作放棄地が増え、土がやせ細り赤土の流出が問題化するなか、同社では「地元農家が安心して生産に取り組めるよう、サトウキビやサツマイモを安定的に買い取り、農業経営の下支えをしている」という。

積極的な新酒開発と地域貢献に全力投球する請福酒造。漢那社長はさらに輸出用のウオッカやウイスキーの開発も計画しているそうなので、今後の展開が楽しみだ。

ラム酒造りを通じてサトウキビ農家の支援も
「新酒開発で低迷する泡盛市場を補完したい」と語る漢那社長

内間 光さん
石垣市商工会

請福酒造さんは泡盛業界が厳しいといわれる状況にあって、地元の食材を使ったあらたな商品開発や同業他社との共同開発、「イムゲー」の復活、そしてサトウキビを原料とするラム酒の製造などつねにあらたなチャレンジをされています。また、今後は輸出用のウオッカやウイスキー開発など、海外展開も行う予定だと聞いています。今後も泡盛業界を牽引し、石垣島を代表する企業として躍進が期待されます。