新幹線の車内販売準備室の空きスペースを使って荷物を運ぶジェイアール東日本物流の有料サービス「はこビュン」の利用実績が伸びている。首都圏で開催される観光イベントに出品する地元特産品の運送に利用する自治体も出てきており、山形県もそのひとつ。この 4 月に 2 日間にわたり、はこビュンで運送した同県朝日町特産の「雪りんご」を東京駅のコンビニエンスストアで販売する。地方創生や物流危機、環境問題といった社会的背景にあって、はこビュンは車内販売の縮小で空室になりがちだった業務用室の一部を活用し、2021 年に事業化された。荷物を預かって空いている業務用室に入れ、行き先の駅まで輸送する。取り扱い駅は JR 東日本が運行する東北・北海道、上越、北陸、 山形、 秋田の各新幹線の主要 12 駅。

基本的には最寄りの主要駅まで荷物を持ち込み、行き先の駅で受け取る。集荷、配送のサービスもあるという。トラックによる陸送より早く、到着時刻も読めるのが利点で、朝採れの野菜や朝に水揚げされた魚が数時間で東京に着き、その日のうちに飲食店で提供できたり、家庭の食卓で味わえたりする。主な荷物は鮮度が求められる農水産物のほか、急を要する輸血用の血液、検体、精密機器部品などと幅広い。輸送は上下線とも利用できるが、首都圏に運ぶ上り線が圧倒的に多いという。同社によると、課題は荷室空間がかぎられ、多量輸送に向かないこと。「今後は荷室スペースを一部客室まで拡張することを検討している」と担当者は話している。

迅速性がウリのはこビュン(朝日町観光協会提供)

山形県は事業化当初からはこビュンを利用し、昨年 6 月には山形新幹線にサクランボを載せて、約 2 時間半後には東京駅構内のコンビニエンスストアで販売した。その後もスイカやラ・フランス、日本酒など、県の特産品を東京駅などでの販売や駅構内の催事で PRしてきた。今回の雪りんごの販売は同県の「春の観光キャンペーン」の一環で、冬季間、雪中に保存して熟成させたブランド性のあるリンゴを売り込む。県の担当者は「地元の特産品を鮮度を落とさずに首都圏の消費者に届けることは観光 PR にもなる。山形県への誘客につなげたい」と、はこビュンの迅速性を評価している。今年はトラック運転手不足で荷物が届かなくなる 2024 年問題を抱えていて、はこビュンは物流の安定性を補完するあらたな手段として期待できそうだ。

(問い合わせ先)
ジェイアール東日本物流
TEL.03-3829-5122
山形県みらい企画創造部総合交通政策課
TEL.023-630-2161
山形県観光文化スポーツ部観光復活推進課
TEL.023-630-2580