地域で世代を超えて受け継がれてきた全国の食文化を認定する文化庁の「100 年フード」事業では、2021 年のスタート以降これまでに 250 件のソウルフードが認定されている。その顔ぶれは秋田県のいぶりがっこなど伝統的な郷土料理として定着したもの、大阪府の大阪ワインのようにまちおこしの起爆剤となっているものなど実に多彩だ。23年度は北海道余市町の「ひる貝カレー」があらたに 100 年フードの仲間入りをはたした。 ひる貝は北海道の日本海側で採れる在来種で、外見はムー ル貝に似ている。地元では古くから食用として重宝され、カレー肉の代わりにひる貝を入れるカレーを食べる習慣まである。その特徴は食感がやわらかく、ダシが良く出ること。
余市町では現在、100 年フードの認定を機に、このひる貝を広く PR しようという動きが盛り上がっている。たとえば、余市観光協会は道内出身で CHEF-1 グランプリ初代王者のフレンチシェフ、下國伸氏の監修のもと、レトルトカレーを開発。ひる貝のだし感を損ねないようスパイスを控えめにし、独特の食感を保つよう心がけたという。2400 個(1 個 900 円)製造し、今年 3 月、観光協会のオンラインショップや地元の観光物産センター、道の駅などで発売し、2 週で 300 個を売り上げた。

カレーを試食する下國シェフ

売り上げは上々で全国展開も視野に入れたいところだが、残念ながら余市町ではひる貝の漁獲量が減少傾向で、カレーの大量生産が難しいという。観光協会の伊藤二朗事務局長は「全国にアピールしたいところだが、肝心のひる貝が手に入らない。地元住民のことを考えると、カレーのためだけににひる貝を買い占めるようなことはしたくない」と打ち明ける。これまで売れた 300 個も多くの地元住民が買い求めたといい、「大々的に打って出るより、まずは地元のソウルフードとして長く定着させていきたい」と足元を見つめる。

(問い合わせ)
余市観光協会
TEL.0135-22-4115
https://yoichi-kankoukyoukai.com/