「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が到来した」――2023年7月、アントニオ・グテーレス国連事務総長は記者会見でそう発言し、「気候変動の最悪の事態を回避する」ためにカーボンニュートラルに向けて行動を加速させねばならないことを強調した。同年の世界の平均気温は世界気象機関(WMO)の観測史上もっとも高くなり、EUの研究機関も工業発達以前と比べて1.5 度以上、上昇していたことを発表。世界の年平均海水温も過去最高を記録しており、地球温暖化を食い止めるための脱炭素に向けた取り組みがあらゆる産業の重要課題となっている。日本も「2050年カーボンニュートラル」を目指しグリーン成長戦略を掲げているが、CO₂ の排出を減らせばそれで問題解決というわけにはいかない。気温・海水温の上昇で農業・漁業にすでに甚大な被害が出ている。たとえば山形県では3月の寒暖差が影響してハチの受粉がうまくいかず、サクランボの「双子果」が大量に発生、売り物にならない被害が。埼玉県の越生梅林や和歌山県でも梅の結実不良で今年の生産量が6~7割減となる見込みだという。地球規模でも猛暑、熱波に襲われ生産意欲が落ちたインド、米国カリフォルニア州の熱波による山火事、メリーランド州の巨大竜巻、ブラジル西部の草原火災、ドイツのドナウ川の氾濫、カリブ海に浮かぶパナマでは海面上昇で島民1200人が移住するなど、異常気象が各国のGDPにも大きく影響している。
GDPといえば、鉄鉱石を産出するブラジルやオーストラリアは記録的大雨でインフラが破壊され操業停止に。反対にアフリカ、ザンビア、チリなどの銅の産出国は干ばつで精錬のための水が少なくなり生産性が低下、商品相場も乱高下している。世界第4位の産油国カナダも干ばつで大量の水を使うオイルサンドの生産が思わしくない。世界中の鉱山がこうした異常気象に脅かされているのだ。この異常気象は温暖化と昨年春から今年5月までつづいたエルニーニョによるものと思われるが、今夏、今秋にはラニーニャが発生し日本にはこれまで以上の酷暑と残暑がもたらされるだろうといわれている。
そこで今号では、夏本番を迎える前にわが国の第一次産業における気候変動の影響とその対応策を、そしてあわせて熱中症対策に向けた産業界や行政の動きも紹介したい。
(つづきは誌面で‼)
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『コロンブス』編集部
2024.06.27
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