バター・ベーキングパウダー不使用、独自製法が強み
大和食品は沖縄の伝統的な揚げ菓子「サーターアンダギー」の製造卸・販売店のひとつだ。他業者と違い、バターやベーキングパウダーを一切使わず、卵と小麦粉、砂糖、植物油脂のみでつくる沖縄唯一のメーカーとして知られる。無添加で防腐剤も使わず、外はサクサク、なかはフワフワで冷めてもおいしいと評判で、土産物店などへの卸をメインに4年前にはネット通販にもにもチャレンジ、リピーターが増えつづけている。
「一般的にはパウダーなどを使わないと生地が柔らくなりすぎて手で丸めることができない。製法は門外不出だが、特殊な道具で空気を入れながらカタチをつくり、ジュラルミン製の大鍋に入れて高温で一気に揚げることで、バターやパウダーを使わずにサーターアンダギーをつくれるようにした」と話すのは大城優輝代表(33歳)。「バターなどを使わないため、5、6個食べても胃もたれしない」という口当たりの軽さが特徴だ。手のひらサイズで1個80円とリーズナブルなのもありがたい。家族で店を切り盛りし、1日平均2000個、多いときには4000個ほど作ることもあるそうだが、「手作りのため大量注文には対応できない」と話す。コロナ禍にあってはネット販売にも乗り出し、それを機に県外のホテルからも注文が舞い込むようになったそうだが、「うちの味を残すためにも手作りにこだわりつづけたい」と力を込める。
地域限定デザートも構想中、地域コミュニティーの拠点へ
一方で、大和食品は倉庫を改装した直売店を昨秋にオープン。それまでは看板もなく、口コミ客のみが訪ねる店舗だったが、「県外客に『ありがとう』といえる場所、そして地域の子どもたちが100円を握りしめて来てくれる場所をつくりたかった」と大城代表。店舗にはプレーン、黒糖、紅芋のサーターアンダギー3種のほか、先代である大城代表の父がつくる特製万能タレや4種の島とうがらしも並ぶ。
新しい構想も温めている。製造風景をガラス越しに見えるようにするほか、実際にサーターアンダギーをつくり、飲食もできるようにするという計画だ。また「アイスクリーム業者とコラボした地域限定デザート」も構想中というから期待が膨らむ。
実は東日本大震災のとき、地域の代表業者として唯一指定され、サーターアンダギー1万個を地域の有志で製造し、被災者向けに送ったこともあるという大和食品。「原材料価格の高騰下でも値段を上げず、ホンモノを味わってもらいたい」という熱い矜持は今も変わらない。次世代に向けてさまざまな事業を構想する、勢いを感じる伝統菓子店だ。

大和食品
沖縄県南城市大里字稲嶺2758 TEL:098-946-8204
設立:1976年 従業員:5名 資本金:――円
HP:https://home.tsuku2.jp/storeDetail.php?scd=0000117320

玉城暁成さん
南城市商工会経営指導員
地元の南城市では「サーターアンダギーといえば大和食品」といわれるほどお馴染みで、幅広い年齢層にとても人気があります。大城優輝社長は伝統的な製法を守る職人気質なところがありながら、とても気さくな人柄で、さまざまなところに積極的に営業を展開して、販路を拡大しています。これからもぜひとも沖縄を代表するお菓子の名店として、地元だけでなく、ますます全国的に有名になっていってほしいと思います。期待しています。

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