母国カナダで培った経験を生かした、富谷市産の百花蜜
宮城県を拠点に音楽活動をしているバンド、モンキーマジックのメイナード・プラント氏は養蜂家としての顔を持つ。母国のカナダで伯父が養蜂家だったことから幼少期から仕事を手伝い、養蜂の知識と経験を深めていたという。そして「バンド活動以外にも打ち込める仕事をやりたい」とバンドメンバーの菊池拓哉氏を誘い、それまでの経験を生かして養蜂業にチャレンジすることに。
こうしてふたりは地元にある里山の七ツ森地域に西洋ミツバチの巣箱7基とニホンミツバチの巣箱1基を設け、2018年に事業をスタート。メイナード氏が社長、菊池氏が取締役を務め、㈱EIGHT CROWNSを設立した。社名「EIGHT」は8つの巣箱から事業がはじまったことに由来する。現在は西洋ミツバチの十数基の巣箱を設けて養蜂を行なっている。メイナード社長によれば「西洋ミツバチはニホンミツバチに比べて体のサイズが大きくて貯蜜量が多い」という。気候条件などによっても異なるが、2週間に1度のペースで巣箱からミツを回収できるそうだ。
また、同社のミツバチはアカシアやフジ、クリなど多くの花から蜜を採る「百花蜜」で、メイナード社長は「年や気候によってハチミツの風味が変わり、テロワール(自然環境要因)を堪能できる」と笑顔を見せる。ミツバチの行動範囲は巣から半径2~4kmといわれ、養蜂のミツバチは基本的には巣箱周りの花からミツを採る。同社が拠点を置く富谷市は低農薬、減化学肥料の有機栽培農業を奨励していて、製品の安全・安心を重視する同社の方針と方向性が一致する。
非加熱のハチミツが強み、ミード酒市場拡大も目指す
同社のハチミツは加熱処理する一般的なハチミツと違い、非加熱を基本としている。巣箱から採ったそのままの状態で製品化することで、風味が豊かで栄養価も高いという。なかでもイチオシはワイルドフラワーで、味は軽くフルーティで爽やかな香りがする。プラムに似た酸味と綿あめのような甘さが味わえるそうだ。そのほか、ハチミツを使った醸造酒「ミード酒」も販売。ハチミツと水、酵母のみを原料とするシンプルな造りの酒で、世界最古の酒ともいわれる。アルコール度数は10~13度で、冷やしてストレートで飲むのがオススメだとか。「日本酒の酒蔵が造るミード酒の味に惚れ込み、自社のハチミツを持ち込み、醸造してもらっている」そうだ。現在の主力はワイルドフラワーを使ったトラディショナルミードで、百花蜜ならではのフローラルな風味が楽しめるという。メイナード社長は「ミード酒の知名度はまだまだ低いが、その分、市場性は十分にある。多くの人に飲んでもらい、広く普及させていきたい」と力強く話す。
ハチミツを軸にした取り組みをすすめる一方で、同社は地元にもやさしい眼差しを向けている。「富谷市で味噌・醤油の醸造を行っていた場所を改築し実店舗にしている。また、将来的には自社で畑を取得、野菜の生産に乗り出し、地元の農家とともにマルシェなどのイベントを開きたい」と菊池取締役は意欲に満ちている。その活躍ぶりに引きつづき要注目だ。
(株)EIGHT CROWNS
宮城県富谷市富谷新町111-1 TEL:080-7007-5833
設立:2018年 従業員:6名(アルバイト含む) 資本金:300万円
HP:https://eightcrowns.co.jp/
土谷 亘さん
(公財)みやぎ産業振興機構産業育成支援部 事業支援課
EIGHT CROWNS は、季節ごとに味わいの変わる自然豊かな生ハチミツや日本では珍しいハチミツを原料としたミード酒などを取り扱っています。そんな同社が「活動拠点である宮城県富谷市のために何かできないか」とはじめたのが養蜂業。自分たちの手で集めた生ハチミツは、風味豊かでえぐみのない甘さが口いっぱいに広がり、MONKEY MAJIK の「空はまるで」の歌詞のように、口のなかに雑味が残らない澄んだ味わいとなっています。
月刊『コロンブス』8月号 絶賛発売中!
本記事は地域における〝産業栽培〟をテーマとした月刊『コロンブス』8月号に掲載されています。同誌では毎号、全国12エリアの元気企業・躍進企業の記事を掲載‼ ぜひご一読ください。