デザイン・バリエーションの豊富さとネット販売で売上高激増

ギリシャ語で「誓い」をあらわす「オルコス」。その言葉をブランド名に冠し、求婚のためのプロポーズリングを中心に真珠や宝飾品を販売している㈱土屋(通称・ジュエリー土屋)は、プロポーズアドバイザー事業も展開している。プロポーズリングのネット販売でも独自制作の冊子『プロポーズの手引き』などを添え、その成功を後押ししている。「結婚して幸せになるためのプロセスをきちんと踏んでほしい」と土屋道照社長(47歳)は呼びかけている。

同社の一番人気アイテムはブランド名を冠する「オルコス・プロポーズリング」。男性から女性に思いを伝えるためのアイテムで、2カラットのダイヤモンドと同サイズのキュービックジルコニアが「シルバー925」にセッティングされている。箱を開けると優しい色のフラワーヘッドリース(デコレーション)に包まれたリングが見える。なんとも優雅、リースの種類は30種以上。リングカラーもゴールド、シルバー、ピンクゴールドと3種あるので、合計約100種もの組み合わせからチョイスすることになる。購入すると、1500年以上の歴史と伝統がある地元・福井の越前和紙のレターセットもつく。「正倉院の宝物庫の保管書籍にも使われるなど丈夫で破れにくいのが特徴の和紙に、『夫婦仲も末永くつづくように』という思いを込めた」そうだ。

そのデザイン性、バリエーションの豊富さによって、オルコス・プロポーズリングは2017年9月の店頭販売以来、順調に売り上げを伸ばしてきた。そして、19年4月にネット販売に参入してからはさらに絶好調に。19年度に190万円だった売上高は年々倍増し、23年度は3000万円に達している。

100 種以上の組み合わせがある「オルコス・プロポーズリング」

北陸発のプロポーズアドバイザー、求婚貢献企業へ

ジュエリーメーカーとしての実績を伸ばしている同社だが、祖業は卸中心の老舗宝飾店で、創業は戦後間もない頃。だが、バブル崩壊によって業績が傾き、近年まで低迷期がつづいていたという。そこで、土屋社長は一念発起、家業継続のため、県域以外への商品展開を決断したそうだ。そして8~9割の女性が結婚するならプロポーズしてほしいと考えていることを知った土屋社長はプロボーズリングに着目。「結婚式・披露宴の実施率が低下しているが、〝求婚〟はこれからだ。ニッチな分野だが、県外マーケットでの成長性が見通せると思った」そうだ。

その思いを胸に、3年前にはプロポーズの真価を伝える一般社団法人プロポーズアドバイザー協会を写真家らとともに設立。「結婚相談の窓口はたくさんあるが、プロポーズ時の相談窓口はない」とアドバイザーとしても活動中だ。

求婚貢献企業として、見事に第二創業をはたした同社、その快進撃はまだまだつづいていきそうだ。

大半の女性が男性からのプロポーズを望んでいるという
「プロポーズの方法を知らない男性をリングでサポートしていきたい」と話す土屋社長

岡田留理さん
(公財)ふくい産業支援センター新産業支援部 ベンチャー支援担当

家業である小売業を継続させるため、市場を全国に広げた「後継ぎベンチャー」として県でも注目しています。「結婚するならプロポーズから」という文化を福井に根づかせ、「世の中を豊かにしたい」という発想を抱いている同社を応援したいと考えています。土屋社長は若い世代ともつねにコミュニケーションをとっているためか、動きも発想も軽快ですが、ビジネス設計はとても堅実です。HP もランディングページでつくるなど緻密で、これからがますます楽しみです。