老舗レンガ製造会社が手掛ける、人気温浴施設

日本の渚百選のひとつ、香川県観音寺市の有明浜は瀬戸内海に面する全長2kmの砂浜で、貴重な海浜植物が生息し、春から秋にかけてつぎつぎと可憐な花をつけて人々を迎える。夕日が瀬戸内の海に沈む光景は言葉を失うほど美しく、日本の夕陽百選にもリストアップされている。そんな絶好の景勝地にあるのが讃岐煉瓦㈱が経営する温浴施設「琴弾廻廊」だ。施設の規模の大きさは四国屈指で、海水を引き込んだ天然温泉の潮風呂、微細な泡で体を包む気泡風呂、時期により種類を変える薬湯、湯に浸かりながら日没を眺められる露天風呂など多様な湯舟を持つ。

同社の川崎翔護専務(32歳)は「泉質はカルシウム・ナトリウム塩化物泉で保湿効果が高く、湯冷めもしにくい。海水のミネラル成分も豊富で『美人の仕上げ湯』といわれる」と話す。

施設のもうひとつの目玉は11種のサウナで、国内で最大規模のひとつにあげられている。なかでもロウリュ(サウナストーンに水をかけて蒸気を発生させ、発汗を促すこと)の際に瀬戸内の特産品であるレモンの果汁を注ぎかけ、かんきつ系の香りが室内に広がる「瀬戸内レモンサウナ」は、利用者から「こんなさわやかな香りに包まれたことはなく、感動した」と大好評だ。ほかにも1200年以上前の日本古来の蒸し風呂を再現した古代和風サウナ「釜サウナ」、室内の照明を暗くして炎のゆらぎを楽しむフィンランドの施設に着想を得た「トゥリサウナ」などバリエーションに富む。入浴施設の隣りに別棟で宿泊棟を備え、泊まり客の需要も呼び込んでいる。さらには高規格キャンプのグランピング施設もあらたに設けた。

海水を引き込んだ天然温泉「潮風呂」
アウトドアブームを取り入れたグランピング施設

トレンドを捉えた業態転換で集客

経営主体の讃岐煉瓦は創業120年を超える老舗企業で、もともと建材用のレンガ製造を本業としてきたが、レンガ造りの建物は国内からほどんど姿を消し、将来展望が描けなくなった。川崎専務によると、本業の不振を補う業態転換の第1弾として40数年前、自動車免許教習所を開設。それにつづく第2弾として1990年代後半に温浴施設の経営に乗り出したという。温浴施設のオープンは「スーパー銭湯ブーム」、サウナ施設の拡張は「ととのうブーム」、グランピングは「アウトドアブーム」と時代の流行を敏感にキャッチして事業に取り込んでいる。自動車教習所は合宿がメインで、受講者には温浴施設の宿泊棟を提供するなどグループ企業の経営資源をうまくかみ合わせている。川崎専務は「国内でも有数の景勝地である有明浜の恵まれた地の利を生かし、温浴施設を核とする総合型リゾート施設として成長させたい」と胸を膨らませる。

業態変更の第1弾は自動車教習所
「総合型リゾート施設をめざす」と語る川崎専務

菅 徹夫さん
㈱菅組 代表取締役社長

当社は施工業者として、温浴施設『琴弾廻廊』のサウナリニューアルにかかわりました。「日本一のサウナの種類を誇る温泉施設へ」をテーマとしたこの一大プロジェクトには、「世界のサウナを旅した経営者のサウナへの愛」と「香川県の歴史を取り入れようという経営者の地元への愛」が詰まっています。明治 30 年創業の老舗企業でありながら、時代が求めるさらにその先へ向かって挑戦をつづけています。讃岐煉瓦㈱の今後の躍進に期待しています。