注目は8月30日付の糸島新聞に掲載された「水素エネルギー体験学習」。国立大学法人九州大学水素エネルギー国際研究センターが主催する糸島市民を対象とした、小学生向けの親子教室だ。国内屈指の水素研究拠点ならではの、水素エネルギーを学ぶユニークな学習機会となった。
2050年までのカーボンニュートラル達成に向けて、化石燃料に替わるエコエネルギーとして「水素」が注目されている。この水素エネルギーについて、糸島市在住の小学生と親子を対象に開かれるのが「水素エネルギー体験学習」だ。主催するのは、同市内にキャンパスがある国立大学法人九州大学 水素エネルギー国際研究センター。同センターの研究者が講師となり、普段はなかなか入ることのできない大学の研究室などで、最先端の水素技術を身近に体験することができる。毎年定員を超える応募があり、今年は小学4年生から6年生の児童38人、保護者35人の計73人が参加した。
8月7日には同大水素エネルギー国際研究センターの西原正通教授、10日は同大工学研究院の立川雄也准教授が講師を務め、まずは水素を使った実験を行った。子どもたちは水が入ったペットボトルに重曹を加えて混ぜ、差し込んだ2本の鉛筆の芯に電流を流し、電気分解によって水素と酸素を発生させた。つぎに、発生した水素と酸素が結合してふたたび水に戻るときの化学反応で電気が生まれオルゴールが鳴るという実験に挑戦。体験学習の後は、キャンパス内の「水素社会ショールーム」や燃料電池車のほか、九大エリアで今年から実証事業がはじまっている「水素燃料電池バス」を見学した。このバスは太陽光発電などで余った電力を活用して、九大の水素ステーションで製造した水素エネルギーを使用している。体験学習では特別に停車中の車内を見学。停車していても水素からつくられた電気で車内はクーラーがきいており、子どもたちは運転席に座ってみるなど、貴重な体験に大満足の様子だった。
この体験学習は同センターが「地域の子どもたちに水素エネルギーに親しみを持ってもらいたい」と市に働きかけ、事業化したものだという。子どもだけでなく、親も一緒に参加することでより水素への理解が深まる体験学習として2018年にスタートした。「当初、参加者は『水素って何?』『爆発しないの?』という認識だったが、最近は『水素はどんなふうに利用するの?』『水素カーは使いにくくないか?』『どうやったらコストが下げられる?』など、確実に水素の利用者としての目線に変化している」と同センター藤田美紀研究員。日本屈指の水素研究拠点を有する市民ならではの、ユニークな学び場となっている。
糸島新聞
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1917年創刊 発行部数1万3000部
福岡県糸島市と福岡市西区の今宿以西(旧糸島郡)を主エリアとする。
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本記事は地域における〝産業栽培〟をテーマとした月刊『コロンブス』10月号に掲載されています。