新事業でDXシステム開発、地元企業の生産性向上に貢献
生産性向上のためのDX(デジタル・トランスフォーメーション)が経営に欠かせないといわれるなか、プラスチック金型の設計・製造の㈱カワイ精工は2021年、新事業としてDXシステムを開発する部門を立ち上げ、システムを地元企業に提供している。キッカケは川合忠昭社長の長男で専務の忠実氏(48歳)がUターンし、同社に入社したことだった。忠実氏は東京でシステムエンジニアの仕事をしていたため、その道のエキスパート。当初は自社向けにシステムを構築し、自社の業務にかぎって運用していたが、そのうちDX導入を検討している地元企業から相談を受け、他社向けのシステムの開発を手掛けるようになったという。今では県内の製造業を中心に7~8社にシステムを提供しており、システム部門の売り上げが3年で4倍にまで急成長した。
このシステムでは、受注から請求までを一貫してデジタルで管理し、ペーパーレスで情報の共有や省力化、作業時間の短縮をはかる。ほかにも設計図の制作や工程の進行管理も行なう。品質管理についても製品の不具合を自動で検知し、通報する機能がある。システムは納入先の要望を受けてイチから構築するオーダーメイド型の受託開発と、規格品のシステムを提供するパッケージ型の開発にわかれ、現時点では前者がメインとなっている。ただ、忠実氏は「オーダーメイドは開発の難度が高く、技術者にも高度なスキルが求められるため、人材確保が難しい。価格も安いとはいえず、中小企業では導入しにくい」と課題をあげ、「将来的にはより開発しやすく、比較的低価格な パッケージ型に力を入れたい」と展望を描く。
情報分野の後進育成にも尽力
忠実氏は情報セキュリティの専門家として経済産業省の情報処理安全確保支援士の資格を有し、地元のIT系専門学校の講師を務め、後進の育成にあたっている。この春には教え子のなかからひとりの男性が同社に入社するという朗報も舞い込んだ。地元企業の技術開発を支援する(公財)にいがた産業創造機構のIT・情報分野の専門家としての顔も持ち、指導役として地元企業に還元している。忠実氏は「金型の設計・製造という本業を持っているので、現場目線でシステムを構築できるのが当社の強み。この強みを生かし、地元企業の生産性の向上に貢献したい」と話している。
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㈱カワイ精工
新潟県上越市三田245-1 TEL:025-544-5558
設立:1978年 従業員:26名 資本金:1750万円
HP:https://www.kawai-seiko.co.jp/
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山田 繁さん
(公財)にいがた産業創造機構 産業創造グループ
デジタル化支援チームマネージャー
カワイ精工さんは現場を熟知した提案が得意で、ご紹介した中小製造業者の皆さんにも喜ばれています。金型製作・プラスチック成形を営むかたわら自社の IT 化をイチからすすめてきたため、現場目線での実現可能でわかりやすい助言・提案をできるのが強みとなっています。また、自社パッケージ製品やスクラッチ開発のほか、最近は新技術を取り入れて社内情報を活用するRAG(ラグ:検索拡張生成 AI)を開発されるなど、日々進化をつづけています。
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