デジタル技術でクリエイターの活動の場を広げる

情報流通がSNS中心となった今、人気を集めているのがCGのアバター(キャラクター)が本人に成り代わって動画配信をするVTuber(バーチャルYouTuber)だ。㈱glowはこのVTuberを発掘・育成する福井県初のプロダクションで、独自コンテンツでVTuberを育成しながら、地元の魅力発信や企業PRにも貢献している。

同社を設立した動機について、嘉門大助代表取締役CEO( 50歳)は「福井でも多くの人たちがクリエイターを目指しているが、その受け皿がほとんどない。そこで、 YouTubeというプラットホームを使ってクリエイターを育て、活躍を促したいと考えた」と話す。

では、その育成法とはどういったものなのか。同社に所属するVTuber(所属ライバー)はまず、仮想空間の学校「学窓ハクメイ」で3年間をすごす。これは薄明光線(雲の切れ間から注ぐ光の柱)に由来した学校で、所属ライバーたちが表現力を磨くなどの努力を重ねる一方、学校(=会社)側はCGキャラクター制作や配信技術の補助、企画立案などをサポートするという。「現在、当社の制作技術者は全員が福井出身で、所属ライバーは全員女性で11人いる。来年3月に1期生の5人が卒業するが、この間にしっかりとフォロワーを獲得することができている」という。

仮想の学校「学窓ハクメイ」の1期生(キャラクターメンバー)
VTuberを起用した企業の新卒募集ポスター

福井県を『バーチャルリアリティーコンテンツ世界最高峰の街』へ

こうした取り組みをすすめる一方、同社は福井県越前市の公認VTuber「紫式部」と「若紫まい」を運用しており、生配信などで地域情報などを発信中だ。また、観光地の東尋坊では所属ライバーがスマホの音声ガイダンスで歴史を紹介するなど魅力発信に尽力している。「越前市での取り組みで手応えを得ることができたので、今後はその費用対効果を明確に提示しながら、福井県内の市町村にVTuber制作を提案していきたい」と力を込める。

また、民間企業とのコラボも積極的にすすめており、最近は地元企業のリクルート活動に一役買っているという。実際、今年5月の企業合同説明会ではVTuberのポスターで学生が足を止め、着席率が昨年比2倍になった企業もあったとか。その実績もあって現在、県内7社とVTuber活用の商談をすすめており、11月中旬にはキャラクターの受注サイトを立ち上げるという。「いずれは活躍の舞台をメタバース(仮想空間)に移し、生配信のトークイベントやコンサートなどを事業として開催していきたい」と意欲を燃やす嘉門代表。「福井県を『バーチャルリアリティーコンテンツ世界最高峰の街』にしたい」とあらたな夢を描いている。

「メタバースで生配信のトークイベントなどを開催する事業を確立させたい」と話す嘉門代表
キャラクターの関連グッズなども企画・開発する

岡田留理さん
(公財)ふくい産業支援センター新産業支援部 ベンチャー支援担当

VTuber の事務所は地方では数少ないビジネスですが、同社は独自性が強く、実に素晴らしい事業を展開しています。自治体や地元企業などに着実に販路を広げており、嘉門代表の行動力や実践力には頭が下がる思いです。今後ますます伸びてゆく分野であり、近い将来、活躍中のライバーが「この事務所なら安心だ」と福井を拠点にしたり、志望者が「嘉門代表がいるから」と福井県に来てくれたりするようになると思います。夢に満ちた事業をぜひ実現してほしいと思います。