品質を高め、根強い黒板需要にも応え続ける

学校の教室でおなじみの黒板は、指導に欠かせない教育用具のひとつだが、時代の移り変わりとともにホワイトボード、電子黒板へと姿を変えつつある。黒板製造の㈱ サカワも、こうしたニーズに合わせて製品開発をすすめてきた。近年の目玉はなんといっても電子黒板で、学校現場への普及が全国的にすすんでいる。同社ではモニターに英語の罫線(ベースライン)や音楽の五線譜を引いたり、図形を望み通りの形で映し出したりできる機能を持つ製品、旧来の黒板から電子黒板をスライドできる併用型といった高付加価値製品を世に送り出している。

坂和寿忠社長(38歳)が経営トップに就いてからは、黒板用のプロジェクターを考案。「黒板のスミからスミまで投射できるよう、映画のスクリーンよりも横長の超ワイドな投影域を可能とした」という。指導法に定評のある教員の教え方を後進に伝承できるよう、その教員の板書内容をそのままデータとして残せる新機能も編み出した。

一方、旧来型の黒板も小学校を中心に根強い需要があるという。坂和社長は「小学校では習字や漢字の授業があり、チョークならではの書き味がそれに向いているからだ」と話す。チョークはホワイトボードのマーカーより安価でランニングコストの面からも重宝されており、当分は習字や漢字の授業の需要が見込めるとのこと。今でも小学校の教室では、休み時間に児童が黒板消しで字を消してパンパンとはたいてチョークの粉を落とす昔ながらの光景が残っているという。

少子化の影響で新設校が減り、黒板の市場は縮小傾向にある。「それでも、昔ながらの黒板需要を掘り起こしていきたい」と坂和社長。黒板は品質が均一化し、メーカーによって差が出にくいといわれるが、こうしたなかにあって「当社は品質を高める努力をし、安値合戦に巻き込まれないようにしたい」と語る。その姿勢が製品に反映され、大阪府立の全高校や東京都港区の学校に採用されるなど、全国規模で販売実績を上げている。

黒板用プロジェクターは投影域が超ワイド
スライド型の電子黒板

教育現場を応援する活動もスタート

また、同社は「先生を応援する」というユニークな取り組みもはじめた。10月には全国の歌好きの教員を都内のライブハウスに集めて歌を披露する音楽イベント「先生ソニック」を開催。出場者は教育への思いや教え子へのエールを歌詞に込めて熱唱し、大いに盛り上がったという。「教員の労働環境は厳しさを増し、成り手不足が社会問題になっている」と坂和社長。「私たちも教育に関係する企業として教員の職業理解を深め、優秀な人材の確保に側面協力したい」と支援態勢を明確にする。

 

先生ソニックのパンフレット
「学校現場を応援したい」と語る坂和社長

上野敬治さん
上野経営事務所中小企業診断士

同社は老舗の黒板メーカーですが、教育分野のデジタル化にいちはやく対応し、数多くの製品を開発してきました。2016 年には黒板全面に投影できるプロジェクター型電子黒板「ワイード」を開発し、全国の教師から高い評価を得ています。さらに大型テレビを黒板上で移動させる「スラード」、黒板に貼るホワイトボード「キセパ」など、つぎつぎとあらたな製品を世に送り出しています。今後も時代の一歩先を見据え、「現場の教師を応援する会社」としてますます進化すると思います。