2024年1月1日の能登半島地震と輪島火災から約1年。同11月26日に公表された「令和6年能登半島地震に係る被害状況等について」によれば、これまでに震度1 以上を観測した地震が1960 回も起こっており、人的被害は関連死を含めて死者462人、住宅は全壊6347棟、半壊2万3086棟。経済損失については、政府が4月下旬に発表した推計で、石川、富山、新潟3県における1月~ 3月のストック(住宅やインフラなど)の毀損額が約1.1 ~2.6兆円にのぼった。また「被災地域が災害以前の経済活動水準まで戻る間の経済損失」は900億~ 1150億円、これにサプライチェーンを通じて全国に波及した生産減少にともなう損失700億~850億円を足すと、合計損失額は1600 億~ 2000 億円におよぶという。1月時点では能登半島地震の影響について、民間の試算で「GDP(国内総生産)を数百億円押し下げる」といわれていたが、それどころではなかったのだ。しかも、これはあくまで1月から3月までの四半期についての推計であり、今なお復旧・復興が滞っている地域が多く、経済活動も元通りとはいかない状況を考えると、確実により大きな影響が日本全体のGDPに響いていることになる。GDPといえば24年2月、日本の名目GDPが世界4位に転落したというニュースが経済界に衝撃を与えた。23年の名目GDPが591兆4820億円で、ドル換算でドイツに抜かれてしまったのだ。さらにIMF(国際通貨基金)の推計では日本のGDPは25年、名目ベースのドル換算でインドに抜かれ世界5位になる見通しだという。また現状、国の豊かさを映す国民1人あたり名目GDPがOECD(経済協力開発機構)加盟38カ国中21位、G7で最下位となっているのも由々しき事態だ。

国をあげて被災地の復興と日本経済全体の底上げをはかっていかねばならないが、コロナ禍後、その障壁となる外的要因がつぎつぎと立ち上がってきた。まず、ロシアによるウクライナ侵攻後の原材料価格やエネルギー価格の高騰に、欧米との決定的な金利差に起因する歴史的円安が加わった。欧米の中央銀行がインフレを抑え込もうと政策金利を一気に引き上げたのに対し、日本銀行がひとりマイナス金利政策をつづけたことで決定的な金利差が生じ、投資マネーが高金利のアメリカの資産へと流出して24年4月には1㌦=160円台を突破してしまったのだ。結果、物価高が家計を圧迫して消費が低迷し、中小企業は価格転嫁ができず賃上げ圧力にも苦しむことに。現在のところ円相場はひとまず落ち着いたといわれるが、米大統領選で再任したドナルド・トランプ氏が関税引き上げを断行すればふたたび極端な円安に振れる可能性はあるし、日本の輸出産業に与える影響も甚大だろう。

こうした状況にあって国家のかじ取りを担う石破政権はというと、先の衆議院選挙で自民・公明両党が過半数割れし、〝少数与党〟として国会運営にあたっている。12月11日には国民民主党が「年収103万円の壁」の見直しについて「与党との税制協議がすすまなければ補正予算案に賛成しないこともあり得る」という姿勢を示したのを受け、自民・公明両党と国民民主党の幹事長が協議を行いあらたな合意文書を交わした。そして翌12日には、総合経済対策の裏づけとなる24年度の補正予算案が立憲民主党の求めに応じて一部修正されたうえで自民・公明両党と日本維新の会、国民民主党などの賛成多数で可決され、衆議院を通過した。少数与党が最初の関門を何とか突破したわけだが、与野党の対話で政策論議が深まったというより、自公が予算成立を最優先し、野党も「与党の譲歩を得る」という成果に飛びついた結果、早期の軟着陸にいたったとの印象がぬぐえない。経済成長と財政再建を両立させるとともに、もはや経済活動の大前提となっている脱炭素の推進、経済安全保障も含めた国家防衛体制の確立などいくつもの難事に取り組まねばならない今、本当の意味で「熟議と合意形成」の国会を実現できるかが問われているのではないか。
石破茂首相は所信表明演説で、「日本全体の活力を取り戻す」ために「地方創生の再起動」「賃上げと投資が牽引する成長型経済への移行」「全世代型社会保障の構築」に重点的に取り組むとした。なかでも地方創生については「新しい地方経済・生活環境創生本部」を立ち上げ、2025年度予算案で関連交付金を倍増すると表明している。この「地方創生2.0」について今後、与野党でどのような政策論議がすすめられていくのか、全国各地のトップリーダーたちも年頭から頭を悩ませているところだろう。というわけで毎年恒例、「2025新春知事メッセージ」(4頁から10頁までが前半、75頁から79頁までが後半)をお届けする。11、12頁には2025年の経済動向とともに「知事アンケート」から見えてきた地域の景気動向や産業振興策などについての分析記事も掲載している。ぜひご一読いただきたい。

(知事メッセージ本編は月刊『コロンブス』2025年1月号で!)