「食はすたれない」と前向き発想

食肉卸のシンカーミートもコロナ禍の直撃を受けたが、肉を街角の自動販売機で売る戦略で、見事に経営危機を乗り切った。「もともと大分県内の飲食店に食肉を納めていたが、コロナ禍で飲食店が軒並み休業に追い込まれ、卸しの売り上げがピーク時の1~2割に激減した。そこで自販機での販売を思いつき、自販機をレンタルして日出町(国東半島南端部、別府湾に面した地)の会社事務所前に置き、販売をはじめた」と髙橋康秋代表(40歳)は話す。すると、肉の自販機販売が県内ではじめての設置だったこともあり、地元メディアに取り上げられ話題沸騰。肉を買い求める地元客のクルマで自販機前の道路が渋滞するなど、想定以上の売り上げを達成した。同社はこの勢いにのって大分市内にさらに4台の自販機を増設。現在は計5台態勢で、全体の売り上げの半分を占めるまでになっている。

この自販機の一番の売れ筋は生で食べられるユッケ。輸入牛肉を食品衛生基準を満たした工場で加工し、急速冷凍して新鮮さと旨みを閉じ込めた逸品だ。また、ブランド牛のおおいた和牛のA5ランクのカルビやホルモンも売れ行きが好調だ。髙橋代表は「コロナ禍に見舞われたときは頭を抱えたが、前向きに販路開拓に取り組んできた成果だ」と振り返る。

自販機は目下 5 台を展開
食肉の自販機販売で経営を立て直した髙橋代表

おおいたブランド肉を扱う卸売業もさらに加速

もっとも、髙橋代表は自販機販売の成功にあぐらをかくことなく、新商品の開発にも積極的に取り組みつづけている。そのなかで生まれたのが「極み肉だれ」だ。有機味噌・醤油を100%使用した無添加の焼肉のタレで、焼肉だけでなく、ステーキやローストビーフのソースとしても使える。全国ネットのテレビの情報番組で紹介され、一躍、ヒット商品になった。新商品開発の第2弾として世に送り出した肉用スパイス「極肉スパイス」も人気の一品に。沖縄県産の塩にブラックペッパーとハーブを混ぜ、風味豊かな調味料に仕上げたスパイスで、クラウドファンディングを活用しながら販路を開拓中で、上々の反応だとか。

コロナ禍が収束し、飲食店にも客足が戻った今、髙橋代表は「コロナ禍にあっては自販機に助けられたが、飲食業界が元の姿を取り戻したからには原点回帰が肝心」と身を引き締めている。今後は「これまで以上におおいた和牛やおおいた冠地どりなどのブランド肉を扱う卸業に力を注いでいく」としている。本業の視界は良好だ。

売れ筋の生ユッケ
牛ホルモンも人気

清家壽人さん
日出町商工会会長

シンカーミートは県内で初めて肉の自動販売機を取り入れたことで、町内で話題になりました。革新的なアイデアで見事にコロナ禍の逆境を乗り切りました。それにとどまらず、焼肉のタレやスパイスにもこだわった新商品の開発、高品質・高価格帯の商品を販売するなど、消費者のニーズをつかんで順調に業績を伸ばしています。これからますます活躍されることを期待しています。