自社開発に乗り出したのが転機に

業務用マッサージチェア企画・販売の㈱日本メディックは倒産の危機を乗り越えてよみがえった企業だ。もともとはコイン式の業務用マッサージチェアをメーカーからリースで借り受け、全国の温浴施設などに設置、使用者から利用料を得るビジネスを展開していたが、リース料が分割払いから一括払いに変更になったことなどで資金繰りが行き詰まり、 2011年に民事再生法の適用を受けて事実上の倒産状態に。それでも、と当時の社長、城田裕之氏(現会長)は再起に向けて一念発起、それまでメーカーから仕入れていたマッサージチェアを自社で手掛けようと、さっそく家庭用マッサージチェアの業務用へのアレンジに挑戦した。ただ、家庭用のままでは部品の耐久性に問題があったり、チェアカバーが摩耗で擦り切れたりする不具合があったので、試行錯誤を重ねた末、12年に同社独自開発の初代「あんま王」を完成させた。

マッサージチェアの耐久性は、一般的に家庭用なら700~800時間の使用に耐えられる水準が目安だといわれている。城田会長の息子で現社長の充晴氏によると、あんま王はなんとその目安をはるかに上回る2500時間の耐久テストをクリアし、業務用にふさわしい耐久性を確立したという。「チェアカバーも経年で擦り切れた際にも交換しやすい仕様にした」そうだ。あんま王はその後もマッサージ機能の可動範囲を広げたり、立体的なマッサージ感を味わってもらえるよう3D機能を持たせたりと改良を重ねた。外観のデザイン性と使用時の快適性も高め、現在では4代目機種にあたるあんま王Ⅳを世に送り出している。こうした地道な努力のかいあって、あんま王はこれまでに累計で2万台を販売、業務用マッサージチェアとしては国内トップのシェアを占めるヒット商品になった。こうした同社の見事な復活劇は24年、経営危機を克服、理想を追求した中小企業をたたえる東京商工会議所の「勇気ある経営大賞」総合部門大賞を受賞した。

あんま王は改良を重ね4代目に
あんま王は各所のリラックススペースに

あんま王に続く、振動ダイエットマシンを開発

そして今、同社はつぎなる一手として、振動する台の上に立ってダイエット効果が得られるマシンの開発を計画している。以前はスポーツジムでよく目にするマシンだったが、主要メーカーが撤退しここ最近は姿を消しつつあるという。「だからこそ、あんま王のような良品を世に送り出せば利用者に高く評価してもらえるはず」と充晴社長。あんま王の成功体験を糧に、これからも耐久性や使い勝手に優れた業務用健康機器の開発で躍進が期待される元気企業だ。

経営危機を乗り越えた日本メディックの城田社長
振動ダイエットマシンも開発

藤本隆宏さん
早稲田大学 教授・東京大学 名誉教授
東京商工会議所「勇気ある経営大賞」実行委員・選考委員長

日本メディックは、東京商工会議所の第 21 回「勇気ある経営大賞」で大賞 ( 総合部門 ) を受賞しました。祖業のマッサージチェア・レンタル業の失敗で民事再生法の適用申請、というどん底から再出発。家庭用マッサージ機ブームのなか、あえて当時存在しなかった業務用マッサージチェアの開発・製造に挑戦。ヒット商品「あんま王」を生み出し、業務用でトップ企業として戻ってきました。まさに「大賞」にふさわしい、着想と粘りと勇気が際立つ企業といえます。