強度を保つ技術的難関を克服

長崎県の離島、対馬(対馬市)の海岸には海洋プラスチックごみが漂着し、地元では大きな社会問題になっている。その量は年間2~3万㎥というから驚きだ。処理に2億8000万円の経費がかかり、自治体財政の重荷にもなっている。

こうした地域課題を抱える同市からのSOSを受け、問題解決に乗り出したのが、奈良県のプラスチック加工の老舗メーカー、㈱リングスターだ。さっそく、同社はそれらの海洋プラスチックごみをリサイクルして、工具収納用のバスケットやボックスに再生させる事業を展開しているという。

対馬市に漂着する海洋プラごみはブイや漁具などさまざまだ。汚れていたり、破損していたりして原型をとどめていないものも少なくない。唐金吉弘社長(61歳)によると「それらをリサイクルするには分別、洗浄、再分別と手間、コストがかかる」という。また「再加工するにしても強度を保つことが難しく、開発には試行錯誤を重ねた。再加工できても耐久性が弱ければムダになるということで、工業系の公的研究機関で強度テストを重ね、全体の10%の比率でプラごみを配合すれば耐久性が保たれることを突き止め、製品化にこぎ着けた」という。おかげで「プロの現場職人の使用にも耐えられる用品を世に送り出すことができた」という。

こうして海洋ゴミを活用して2023年には収納バスケット、ボックスと製品化できたという。容量はともに27ℓウトドアショップで販売されている。一般のプラスチック製収納用品に比べると高価だが、環境保全に意識の高い個人や法人が同社の姿勢に共感して買い求めていくという。

大量の海洋プラごみが流れ着く対馬の海岸
海洋プラごみを再生させたバスケット

プラスチックに対する負の認識を弱めたい、リサイクル事業に力を入れる

そもそも、同社が海洋プラごみのリサイクルに関心を持ったのは「プラスチックに対する世間の負の認識をあらためたかったから」だ。プラスチックは石油を原料とする化学製品で人工的に焼却処分しないかぎり消滅せず、「環境に負荷をかける」という目で見られがちだが「プラスチックに代わる、安全・安心で利用しやすい素材が現状では生まれていない」と唐金社長。だからこそ懸命になって「廃プラから耐久性があって長持ちするプラスチック製品をつくってきた」と話す。だからバスケットとボックスの売上金のうち、1個につき100~200円を対馬市に寄付しているという。社会貢献、ソーシャルビジネスが同社の生き方、ミッション。未来をしっかりと切り拓こうとしている元気企業だ。

プラごみリサイクルはボックスにも
「プラスチックに対する負の認識を弱めたい」と語る唐金社長

藤本健文さん
㈱新亀製作所 代表取締役社長

リングスターの工具箱は、現場のプロからDIY 愛好家まで幅広く支持されている製品です。弊社が精度や強度を追求して製造するドライバーやビットとも相性が良く、厳しい使用環境に耐えられる頑丈さと使いやすさを兼ね備えています。収納するだけでなく、作業効率や現場での作業性を向上させる工夫が随所に凝らされています。工具や工具箱は、現場で働く職人の技術や作業を支えるために不可欠な存在です。たがいの価値を高め合いながら、より良い未来を築いていきたいと考えています。