嫁入り道具から商標「ヨメイリ」誕生
古くから木材の流通が盛んだった三重県桑名市で、古材や古家具の再生事業を展開しているのが㈱ダイマルだ。次期社長の西塚卓郎氏(36歳)は古材や古家具の回収・収集のことを「木の救出」と呼んでいる。卓郎氏は西塚正浩社長の長男で、約5年前にUターン。入社して間もなく目に入ったのが建物の解体や改築現場で廃棄処分される古材や古家具のあわれな姿だった。以来、古い木材が捨てられる運命にあることに違和感を持ち、古材や古家具の再生に本腰を入れはじめたという。と同時に「木に命を吹き込むという意味を込めて、この取り組みを『救出』事業と名づけた」そうだ。
現場から救出された古材や古家具は大工らの手によって、民泊施設の玄関の扉やカフェの1枚板のカウンターなどアンティークでオシャレな建具に生まれ変わり、東京や名古屋などの大都市圏を中心にあらたな場所で「第2の人生」を送っている。また、これらの古材や古家具には「伊勢古材」のブランド名を冠しており、はやくも約230件の救出活動につながっているという。そしてこんなエピソードも。地元の高齢女性が泣く泣く手放した嫁入り道具の桐だんすを引き取ったときのことだった。この家具を古さと新しさが融合したアート性の高い家具にすることを思いついたのだ。そのアイデアは「yomeiri(ヨメイリ)」というブランドになり、同社の高級路線化に一役かっているそうだ。
循環型社会の実現で百年企業を目指す
そもそも、同社が古材や古家具の再生事業に乗り出した背景には、人口減にともなう住宅の新規着工軒数の長期的な減少傾向があった。そこで、卓郎氏はこうした一連の再生事業を「tsunaguプロジェクト」と命名し、このプロジェクトで得た収益の一部は植林、木育活動に寄付している。理由は木と人とモノがつながる循環型社会を目指しているからだ。
今年で創業75年となるダイマル。「百年企業を目指して、つぎの世代にバトンを渡せるよう、持続可能な経営を心がけたい」と卓郎氏は前を向いている。

㈱ダイマル
三重県桑名市参宮通11 TEL:0594-23-2211
創業:1950年 従業員:4名 資本金:500万円
HP:https://tsunagu-kozai.com/

立道和久さん
三重県よろず支援拠点
くわなサテライト
コーディネーター
㈱ダイマルの後継ぎである西塚卓郎さんは、全国の中小企業の後継者・後継者候補が家業を活かした新規事業プランを競う経済産業省主催のピッチイベント「アトツギ甲子園」の第 3 回大会のファイナリストです。解体される民家などから古材や家具を救出し、あらたな価値を見出して販売する事業「tsunagu(つなぐ)」は、地域経済の活性化や域外経済との取引拡大を通して、経済を循環させる社会的に意義のある有望なビジネスです。

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