顧客を大切にする社風を醸成

廃棄物処理業のワコウクリーンサービス㈱は個人、法人向けのごみの収集・運搬業務を担っている。売り上げは圧倒的に法人向けが多く、個人向けは全体の10数%に留まるという。収益のことだけを考えれば法人向けに注力する手もあるが、吉武恭介社長(55歳)は「お客さまとの触れ合い、言葉を交わす機会を通じて従業員に自分たちの仕事の重要性を実感してもらうために家庭や個人客を大切にしている」と話す。

その一環でごみの収集・運搬だけでなく、家の片づけのサービスも行なっているという。「従業員が顧客の喜ぶ顔を目にすることで、日々の仕事にやりがいを感じ、励みになっている」と吉武社長。このように顧客を大切にする社風は社内に浸透しており、電話の受け付けから現場での接客にいたるまで、従業員一人ひとりに徹底しているそうだ。おかげで顧客からは「仕事が丁ねいで対応もやさしい」といった声が返ってきているという。

移動型の粗大ごみ集積場も
日常のごみ回収業務

移動ごみ集積所も従業員のアイデアから

また、吉武社長は従業員から自由な意見を聞き、吸い上げるために社内に企画のチームを組織している。このチームから生まれたあらたな取り組みのひとつが移動型ごみ集積所だ。これは本社のある徳島県徳島市に5カ所の集積所を設け、定期的に巡回して粗大ごみや不用品を個人宅から回収するというサービス。とくに地域の高齢者に重宝がられていて、料金を格安におさえていることもあって身近なサービスとして地域に定着しつつある。

また、地元の小学校への出前授業にも熱心に取り組んでいる。「たとえば、清涼飲料水の空き缶や空きペットボトルに飲み残しが入っていると、処理に手間がかかりコストも高くなるといった話題を取り上げ、子どもたちに自分ごととしてごみ問題を考えてもらっている」とのこと。

こうした社内の各チームに呼び掛け、目下、同社の10年ビジョンを構想中だ。廃棄物のリサイクルに重点を置いて経済活動を展開するサーキュラーエコノミーやSDGsへの取り組みの拡充を検討している。吉武社長は「私たちのミッションは廃棄物処理を通じて社会貢献すること」だと。そのためには「どんなことでもしたい」と意欲を燃やしている。実直、信念の人だ。

ごみ回収への理解を広める出前授業
「顧客と私たち、おたがいの顔が見える機会を大切にしている」と語る吉武社長

影山智浩さん
㈱リブレイス社長

ワコウクリーンサービスの吉武さんとは、 10 年を超えるお付き合いになります。吉武さんを一言でいい表すと「実直」という言葉がぴったりな方で、つねに社員と会社が良くなることを考え、お客さまに喜ばれるサービスを実践しています。自社の経営だけでなく、地域の中小企業の経営環境の向上に向けて日々、精力的に活動しています。その人柄もあって、私も所属する徳島県中小企業家同友会では代表理事を務めており、私の尊敬する経営者のひとりです。