かりゆしキンメで「幸福」を届ける
沖縄本島最南端の糸満市から久米島や奄美大島近海で漁をする第八新漁丸。この船が所属する㈱丸新水産は「沖縄県産キンメダイを全国へ、世界へ」という目標を掲げる、沖縄初のキンメダイを専門に扱う企業だ。同社が獲り、加工し、出荷しているキンメは「かりゆしキンメ」というブランドで販売されている。「県外産キンメに比べて1.5倍くらいの大きさで、脂がさっぱりとしてクセがなく、刺身や寿司のほか、アラ汁にしても旨みが染み出して絶品」と新垣昇司代表(26歳)は太鼓判を押す。ちなみに、このブランドの名づけ親は新垣代表の父親で漁師歴約40年の新垣哲二・第八新漁丸船長。「かりゆし」は「めでたい、縁起がよい」を意味する沖縄の方言で「食べると幸せが訪れる」という思いを込めてこのネーミングにしたそうだ。
では、どうして会社を立ち上げることになったのか。聞けば、伊豆や房総半島などの近海で獲れるキンメダイは高値で取引されており、かりゆしキンメも当初は東京・豊洲市場などで高値取引されていたという。ところが「コロナ禍で値崩れし、『沖縄のキンメを知ってほしい』『フードロスをなくしたい』という一心で会社を立ち上げた。現在は生産・調達から加工、販売までを自社で手掛けている」と新垣代表。具体的には船槽には魚の酸化や好気性細菌の増殖を抑え、鮮度を長時間保持するための特殊装置を実装。糸満漁港から車で5分足らずの自社工場では水揚げしたキンメをマイナス約40℃のアルコールで急速凍結する仕組みを導入し、真空パックで鮮度を保ったまま出荷している。
移動販売車で社会貢献・認知度アップ
同社では今、かりゆしキンメやメバチマグロ、キハダマグロなどの鮮魚に加え、久米島海洋深層水「球美の塩」を使ったキンメの干物などの加工も手掛けている。飲食店やホテルに直販し、福岡や長崎など県外にも卸しているという。また、昨年1月にキンメの出汁からとった「鯛めし」「あら汁」、昨夏には「塩麹漬け」「味噌漬け」を新発売。社会貢献や認知度アップを目指して、近郊の福祉施設や企業にも移動販売車を走らせているそうだ。
こうした商品開発の意欲はさらに高まっており、「冷凍ではなく常温で流通できる商品を開発している真っ最中。消費者目線を考えた商品づくりに努めたい」と新垣代表は力を込める。飲食店の開設や海外輸出も狙っているというから今後の展開が楽しみだ。

㈱丸新水産
沖縄県糸満市潮崎町4-12-5 TEL:098-952-4719
設立:2021年 従業員:4名 資本金:60万円
HP:https://r.goope.jp/marushinsuisan/

石橋修一郎さん
糸満市商工会
経営指導員
父親が命をかけて獲ってくる金目鯛を沖縄県民に食べてもらいたい」という一心で開業した㈱丸新水産。新鮮で高品質な金目鯛は、自社工場でお刺身やお寿司、干物、鯛めしやあら汁に加工され、お客さまへ直接、販売されます。いずれも、誰もが口を揃えて「とてもおいしい」と満足する逸品です。同社の商品は商談会でも高く評価され、現在は沖縄県外のみならずシンガポールにも売り出しています。沖縄県のあらたな特産品「かりゆしキンメ」、ぜひ一度ご賞味ください!

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