「圧倒的チャレンジ精神」で先端分野拡大
約50年の歴史を誇る金型メーカー、ニッシン・パーテクチュアル㈱が、産業構造の変化やコロナ禍によってまさかのピンチに。だが、2022年に日本国内に数台しかないといわれる「5軸フェムト秒レーザー加工機」を導入し、超微細加工技術で先端分野にチャレンジした。
そもそも、同社は自動車や電器製品、建築部材などの金属部品製造に欠かせない金型の分野で、素材を加熱せずに常温で成型する冷間鍛造用の金型製作や難削材の超硬合金の精密加工を得意としてきた。しかし、「受注の8割が自動車向けで、EV化への流れや部品共通化などの環境変化にコロナ禍が加わり受注が減少。 次世代に向けたチャレンジが急務となり、先端の加工法を取り入れることにした」と中村稔社長(51歳)は話す。
では、5軸フェムト秒レーザー加工機にはどのような特徴があるのか。「パルス幅がフェムト(10のマイナス15乗)秒と短く、非熱加工で材料を瞬時に気化し、熱の影響を最小限に抑えることができる。また、金属やプラスチック、セラミックス、ガラス、木材など対応素材が多様で、材料表面に超微細なパターンを施して金属の摩擦特性を変えられるほか、素材の反射率を調整して発色させる『構造色』をつくることもできる」と中村社長。その特性ははやくから注目され、導入して間もなく「新規受注は50社以上に達しており、その多くが医療、半導体、航空、金融など接点のなかった業界ばかりだ」という。
ヒューマノイドロボット開発も視野
同社はこの動きに加え、5軸フェムト秒レーザー加工機を導入した翌年に「AI事業部」を創設し、生成AI普及協会(GUGA)に加盟。業界団体や企業の講習会で、最新AIツールを業務効率化や戦略立案、デザイン制作で活用する方法を提案する一方、超微細加工にも生成AIを活用するなどしている。「セキュリティー面から生成AIの導入に二の足を踏む人もいるが、勇気を持って、どう使いこなすかが大事だ」と中村社長は力説する。
さらに、最近は「生成AIの延長線上にある」としてヒューマノイドロボットの研究にも着手。超微細加工を担えるヒューマノイドロボットの開発などを視野に入れているという。こうした取り組みを通じ、同社はこれからも未来と先端技術を切り拓きながら、企業の価値を高めていくとしている。

ニッシン・パーテクチュアル㈱
埼玉県春日部市南栄町12-20 TEL:048-754-6511
設立:1973年 従業員:20数名 資本金:3000万円
HP:https://pertechtual.co.jp/

倉崎哲雄さん
(公財)埼玉県産業振興公社 DX 推進支援
同社は高度な技術力を持ち、顧客のあらゆるニーズに対応しています。中村社長は、最新鋭の設備導入や技術革新に積極的に取り組んでいます。また、社員の働き方改革にも力を入れ、機械とITの活用により残業時間の削減や休日拡充を推進しています。さらに近年では生成 AI 活用支援事業も開始し、中小企業の課題解決にも貢献しています。これらの取り組みが認められ、埼玉県が主催する第 2回埼玉 DX 大賞の優秀賞を受賞しました。

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