古新聞から生まれた断熱材

被災地に建築された仮設住宅のうち、623戸に断熱材メーカー㈱デコス(安成信次社長)製のセルロースファイバー断熱材「デコスファイバー」が取り入れられている。16年の熊本地震、20年の熊本豪雨の際も計1175戸への採用実績があり、それが認められて能登地震での導入につながった。

仮設住宅はかつてはプレハブ工法で一定期間での役目を終えたら取り壊される運命にあったが、熊本地震以降、木造で被災者が長く住みつづける恒久住宅に様変わりしたため、デコスファイバーが能登半島地震の被災地に根づく住宅資材としての存在感を増している。

 

 

 

新聞が綿状の断熱材に変わる
デコスファイバーが採用された能登地震の仮設住宅

CO2排出も削減し、環境性と両立

㈱デコスはもともと不動産業でスタート。関連の住宅建築部門で要求を満たす断熱材が見当たらなかったことから「それならば自社で作ろう」と断熱材製造業に乗り出し、断熱材の性能アップに励んできた。そのなかで生み出されたのがデコスファイバーだ。主な材料は、資源回収された新聞紙。それを綿状に粉砕し、エアブローのような専用機で壁のあいだに吹き込んで充填する。

取締役企画部長で東京OFFICE所長の田所憲一氏(57歳)によると、一般の断熱材より断熱効果が高く、その性能はJIS規格のお墨つきを得ているという。「原材料が古新聞なので資源の有効活用になっているほか、製造過程で使われる電気などのエネルギーの量が通常の断熱材にくらべて大幅に少なく、CO2の排出量の削減にもつながっている」と機能性と環境性の両立を強調する。デコスファイバーは断熱材としてははじめて、製品が製造されてから廃棄されるまでのCO2排出量を数値化する「カーボンフィットプリント」を取得し、CO2削減の推進の「見える化」を実践している。

また、同社では「このデコスファイバーの断熱効果を最大限発揮できるように」と独自の施工技術まで開発した。すき間を生まない乾式吹き込み工法「デコスドライ工法」がそれだ。「断熱材メーカーは断熱材をつくるだけで、施工は別の建設会社に任せるのが一般的だが、当社は親会社が工務店である強みを生かし、施工まで同社系列で完結させることができる」と田所氏。「全国60社の工務店とフランチャイズ契約を結んで施工技術を高め、断熱効果を落とさない態勢を築いている」と胸を張る。その自信を裏づけるかのように、壁内の結露が10年間発生しない保証をつけて販売しているそうだ。

断熱効果を落とさない施工技術
デコスファイバーの機能性と環境性の両立に自信を見せる田所氏

浅葉健介さん
日本ボレイト㈱ 代表取締役社長

㈱デコスは、日本ボレイト㈱が提唱する「ながいき住宅のレシピ」をともに体現する、信頼のパートナーです。構造躯体をホウ酸で守る日本ボレイトと、快適な室内環境を実現するセルロースファイバー断熱材を提供するデコス。両社はともに「ホウ酸」を使用し、「責任施工」を徹底しています。そこから、理念と技術を融合した業務提携ブランド「デコレイト」を展開。「安心・安全・健康・長持ち」をキーワードに、全国の工務店や設計者と連携し〝、住まいも住まい手も長生きする家づくり〟を実現する姿勢は、私たちと完全に一致しています。