世界最大の木造建築「大屋根リング」が演出する次代の「木の文化」

今回の大阪・関西万博、目を引くのはやはり空飛ぶクルマや水素燃料電池船「まほろば」、NTTやパナソニックが手掛ける水素サプライチェーンモデルの実証展示、超薄型、軽量で曲げても使える次世代太陽光電池「ペロブスカイト太陽電池」などといった次世代エネルギーではないか。しかし、一番の目玉は1周約2㌔㍍、高さ最大20㍍、面積6万1000平方㍍の大屋根リングだ。世界最大の木造建築物でギネス世界記録にも認定された。このリングにはコロナ禍や紛争で分断がすすむ時代に世界をひとつにつなぎ合わせる「多様でありながら、ひとつ」という理念が込められており、内側に世界各国のパビリオンすべてが配置されている。地球のやさしさと資源循環の大切さが表現された万博会場のシンボルだ。
4月13日、このリングのなかに158カ国・地域が集う、大阪・関西万博が大阪湾の人工島・夢ゆめしま洲(大阪市此花区)で開幕した。テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」だ。会場の中心には、それにピッタリの約2.3㌶の「静けさの森」がある。この森の設計・デザインを手掛けたのは万博のランドスケープデザインディレクターであるE-DESIGN(イーデザイン、大阪市)代表の忽那裕樹氏と日建設計。森は直径20㍍ほどの池を囲むように植えられた約1500本の樹木から成り、そのうち約900本は大阪府内の公園から移植したものだという。真っ直ぐ伸びた木や曲がって伸びた木が入り交じり、まさに多様な森に。
大阪・関西万博公式ガイドブックには「人間一人ひとりが自らの幸せや生き方を見つめ直し、それぞれの可能性を最大限発揮できる持続可能な社会」とあったが、その通りの光景が広がっている。当然、ホスト国「日本館」の建築も木が主役だ。円を描くように立ち並ぶ無数の木の板で、世界が小さな循環によって成り立っていることを表現しているとか。万博閉幕後、これらの木の板は日本各地でさまざまなものにリユースされるそうだ。
また、万博のテーマに8人のアーティストらが挑むシグネチャーパビリオンも見所、映画監督の河瀨直美氏がプロデュースする「Dialogue Theater―いのちのあかし―」では、奈良県と京都府の廃校を解体し、その木材で建てた会場のなかで、「木音―KION―」という音響建材が優美なサウンド空間を演出している。

音響建材「木音―KION―」から考える「いのち輝く未来社会のデザイン」

このように大阪・関西万博は脱炭素技術や資源循環のアイデア、そして日本の「木の文化」を伝えるさまざまな展示であふれている。今号の月刊『コロンブス』では、それらのなかでもまさに「いのち輝く未来社会のデザイン」を凝縮したようなある展示物注目してみた。厳選したのは前出の音響建材「木音―KION―」、1枚の大きな無垢板を共振させることによって音を出す日本初の「点駆動面振動スピーカー」だ。驚異の癒し効果をもたらす木工技術と超絶なスピーカー技術が集約されているのだ。これらの技術の応用範囲は広い。住宅、オフィス、高齢者施設、ホテル、カフェなど幅広く活用できそうだ。アイデアしだいで「木音―KION―」が産業栽培をもたらす夢のビジネスシーズとなるかも。前代未聞、音響関係者もオドロキの技術を用いたこの「木音―KION―」、人間の持続可能な暮らしのあり方や自然との関わり方などを見直し、「いのち輝く未来社会のデザイン」を考えるのにピッタリの一点モノだ。さっそく紹介したい。

(つづきはぜひ月刊『コロンブス』本誌で!)